もしも科学シリーズ(3)もしも空気の成分が変わったら


地球を取り巻く空気は、約78%の窒素に続き、酸素(約21%)、アルゴン(0.9%)、二酸化炭素(0.03%)が主成分だ。ほとんどの生物が必要としているにも関わらず、酸素は5分の1強に過ぎず、誤差の範囲ともいえる二酸化炭素の量は、温室効果ガスとして削減が論じられているのだから驚きだ。



呼吸だけを考えれば、酸素は多いほうが良いだろう。1%に遠く及ばない二酸化炭素なら、増えても減っても影響がなさそうだと思えたのだが、どちらも健康を大きく左右し、わずか数%の違いでも生死にかかわるダメージを与えるのだ。



■酸欠が酸欠を加速する?



ほとんどの生物に酸素が必要なのは、いまさら説明不要だろう。その酸素が減るとどうなるのか、人間を例にとって説明しよう。



・18% いわゆる酸欠の状態



・16% 脈拍/呼吸数増加、集中力の低下、頭痛、耳鳴り



・12% 立っていられない、めまい



・10% 意識不明、嘔吐(おうと)



・8% 昏睡(こんすい)状態



・6% 瞬時に失神、呼吸停止



16%を下回ると、人間は酸素を取り込むことができなくなると言われている。呼吸しても、逆に酸素が体外に出てしまうのだ。息をするほど酸欠になるのだから、たまったものではない。ちなみに、15%を下回るとろうそくの炎が消える。集中力が低下した状態でも、確実かつ手軽に判定できる方法だ。洞穴探検には忘れずに持っていこう。



逆に増えたらどうなるか? 病気やけがの治療、美容をうたった「酸素カプセル」が存在するぐらいだから健康に良さそうに思えるが、50%以上の環境で長時間過ごすと肺胞や気道に障害が起きるという。医療用に用いる場合でも、100%なら6時間以内、80%では12時間以内が安全としたデータもある。多くても少なくても健康を害するとは、実にやっかいな気体だ。



■二酸化炭素は100万分の1の世界



もとより0.03%しかない二酸化炭素では、濃度をppm、すなわち100万分の1単位であらわされることが多い。10,000ppmが1%だから0.03%は300ppmとなる。こちらも濃度が上がるとどうなるかを調べてみた。



・300〜400ppm 新鮮な空気



・3,800ppm 【込み合った地下鉄の車内】



・5,000ppm 【締め切った自動車内】



・15,000ppm 息切れ、脈拍数増加



・30,000ppm 頭痛、吐き気



・100,000ppm 視覚障害、けいれん



・250,000ppm 昏睡(こんすい)、窒息死



低濃度では呼吸中枢が刺激され、多くの酸素を取り込もうとして呼吸深度と呼吸数が増える。さらに濃度が高まると麻酔作用を及ぼし死に至らしめる。自分が吐き出した二酸化炭素が、酸素と同じ20%ぐらいになると死ぬ可能性がある。そう思うと呼吸するたびに落ち着かない気分になる。



はっきりと自覚できるのは15,000ppmぐらいだろうか。これでも1.5%だから、酸素よりもはるかにパワーがある。集中力を要する学校は1,500ppm、職場でも5,000ppm以下が望ましいとされているのも納得できる。



濃度が低下するとどうなるのか? 3,500ppm以下であれば安全とされており、少な過ぎて害が生じるという資料には、残念ながらめぐり合わなかった。余談だが、血中の二酸化炭素濃度が低下し、過呼吸を起こしやすくならなければ良いのだが。



■結論



ある研究では、1年に4ppmの酸素が減少していることが分かった。人口の増加、森林の減少、燃料消費に加え、宇宙への流出も原因と言われている。もっとも、地球の長い歴史のなかで、酸素も二酸化炭素も常に増減しているので一過性の現象かもしれないが、このまま減り続けると7,500年後には「酸欠」となる。



残念ながら、人間は酸素を消費するだけで、生み出す機能はない。植物に頼るか、化学的に作り出すしか方法がない。

ガスや電気と同様に、「有料」で取引される日は、そう遠くないのかもしれない。



(関口 寿/ガリレオワークス)