創造と破壊、功罪あわせ持つクリストファー・コロンブス。
コロンブスのアメリカ大陸上陸は本人が思いもしない影響を人類全体に及ぼしました。

米自然史博物館で先月開かれたGizmodo×io9共催イベント「First Comes the Dream」でニール・ドグラース・タイソン(Neil deGrasse Tyson)宇宙物理学博士が、そのお話をしてくれましたよ。

コロンブスのお話に移る前に、博士はこんな前置きをしています。
 


この地球には、無駄に生き、無駄に死ぬ生命体などひとつもない。

君がなんかのウイルスで死ぬと、君の遺伝子プールは地球上に残るものから消える。でもだからこそウイルスで死ななかった人はそのウイルスに対する免疫をつけ、前に歩み続けることができる。

よって君の死は無駄にはならないし、君の生も無駄にはならない

このたゆみない進化のプロセスを何百万年と続け、地球の生命の樹は枝を広げ、今ある有機体のポートフォリオとなった。これはいわば生き残り組みだ。

我々の体内にあるのは我々を殺す菌ではない。もっと前のバージョンの我々を殺す力のある菌だ。それを我々はサバイブしたのだ。

宇宙人が地球に降りてきても彼らには、この何百万年におよぶ自然淘汰の結果、地上に存する病から身を守るよう備わった免疫がない。

大西洋を横断したコロンブスの身に起こったのは、まさにそれだった。

いわゆる「Columbian Exchange(コロンブス交換)」論ですね。博士はそれにアレンジを加え、人類全体をひとつの有機体として捉える、もっとホリスティックな視座を提示しています。

イベント(スマホのMotorola Atrix HDで撮ったので映像荒くてすみません)ではワイン片手に聞き入る人たちを前に身振り手振りを交えながら、こう熱く語りました。

(動画訳)コロンブスのアメリカ上陸は、人類史上最も重要な事件だった。どうしてそう思うか、理由を説明してみよう。

我々の先祖はアフリカから始まった。ある者はヨーロッパに移動し、ある者は南の海岸を目指し、ある者はアジアを目指した。

そして氷河期が訪れる。とんでもなく寒い。海水が蒸発し、雪となって大地に降る。この雪がもう絶対解けないわけよ。

雪が解けないと、氷河が発達する。ほんで海面が下がって、陸が露わになる。で、とうとうベーリング海峡もベーリング地峡となって、アジアが北アメリカと繋がった。この氷河期に人類はアジアから北アメリカに移動した。いいね? これが1万年前だ。

やがて氷河期が終わる。

氷河が解け、海に水が満ち、大陸と大陸を結んでいた陸路は海に沈んで途絶えた。こうなると人類はもう移動できない。

こうして南北アメリカに芽吹いた人類の種は南北アメリカに閉ざされたんだ。1万年間ね(1:50)。

種の系統。人類の種には2通りの枝がある。ひとつはヨーロッパ・アジア・アフリカ。もうひとつは北アメリカ・南アメリカ。それが互いに互いの存在を知らぬまま1万年過ごしてしまったんだね。もうひとつの種なんて、存在することも知らないし、どこにあるかもわからない。

そんな状態がずっと続いたんだ。クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に渡るまでね。

コロンブスのアメリカ上陸で1万年離れ離れだったふたつの種はまたひとつに繋がった。これはまさしく人類史上最大の事件だ。

文化だけじゃない。生物も融合した。北アメリカには初めて天然痘が現れ、ヨーロッパに初めては梅毒が現れた。まあ、コロンブスもここで何度もセックスしたんだろうからね。


お話の中でタイソン博士はコロンブスの大陸上陸を人類にとって「最良」とも「最悪」とも言わず「最も重大な」という言葉を選んで、善悪の判断は聞き手にゆだねている点も目をひきますね。進化という面では確かに博士の言う通りで、少なくとも有史以来ここで語っておられる通りのことが起こってます。


Brent Rose(原文/satomi)