レジャラース会長
新冨 宏
1947年、福岡県生まれ。ホテル勤務などを経て71年、ハワイアン・グループ入社。その後、レジャラース設立。半生記に、倉科遼著『キャバクラ王』(実業之日本社)がある。

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酒席とは人間の本性が表れる場面のひとつではないだろうか。昼間は隠せていても、華やぐ夜の世界では、つい本音がでる。何千人というお客を見てきた経験から共通項が浮き彫りになった──。

銀座の高級クラブは、雰囲気も落ち着いていて、客層も「すでに成功した人」が多い。「今、出世の階段を上っている人」はどうなのか。キャバクラでも傾向を聞いてみた。

東京・歌舞伎町のキャバクラで働く「キャスト」の女性は、「出世する男は同僚や友達と来たときでも、気配りのできる男だと思う」と話す。

「事前に聞いておいた好みのタイプの女の子をさりげなく呼ぶ――。取引先の接待ではそんな気配りができても、友人や同僚と遊びに来たときは自分勝手になる人は多い。それじゃ続かない」

「誠実さ」の面では、どんなクルマに乗っているかも、重要な要素になる。銀座や六本木の歓楽街には黒塗りの高級車がずらりと並ぶ。だが、キャバクラのお客は皆がそういうクルマに乗っているわけではない。そこで、見栄を張って「外車」に乗っても、キャスト(ホステス)には見透かされている。

「会社員なのに、高い輸入車に乗っている人は出世しないと思う。無理なローンを組んでクルマを買って、キャバクラ通いを続ければ、破綻は目に見えている。派手なクルマに乗っている人が長く通ってくれる客だとは限らない」

■“同伴”で行く店を決められる男は出世

キャバクラは約25年前に登場した新しい業態だ。それまでナイトビジネスの世界には、高級なクラブか庶民的なキャバレーしかなかった。そこに、双方のよさを併せ持つキャバクラが新たに登場したのだ。明朗会計で高級感もあるキャバクラは瞬く間に数が増え、1985年にはキャバレーとクラブを足したキャバクラという造語が「新語・流行語大賞」の新語部門・表現賞を受賞している。

このキャバクラを日本で初めてつくったのが、現在、歌舞伎町でキャバクラ「蘭○(ランマル)」などを運営するレジャラースの新冨宏会長である。「出世する男」について、新冨氏はキャバクラの経営者として客と接した経験から、「思いやり、誠実、情熱、厳しさを兼ね備える人物」だと分析する。

「常連のお客様に年商100億円の企業の創業者がいますが、この条件を備えています。静かに飲む。さりげなく女性に気を使う。とてもきれいな飲み方をされています」

出世する男には「オレがオレが」という強引さも必要な気がするが、「そんなことはなくて、むしろさりげなく振る舞うもの」と新冨氏はいう。

「女性の好きな物を取ってあげて、シャンパンを空ける。そして女性を喜ばせてさりげなく帰る。男性スタッフに対しても決してエバらない。こうした店には、お客様は気分よくなろうと思って来店される。そのとき『オレだけ気分がよくなればいい』ではだめなんです。女性に求めるものが半分、自分が与えるものが半分。それで全員が気分よく過ごせる。会社経営や日常の仕事も同じではないですか。従業員や取引先に求める一方ではなく、従業員も取引先も気分よくさせてあげれば、仕事はうまくいくはずです」

女性を気分よくさせることができる男は、良好な人間関係をつくるのがうまいということでもある。

しかし主導権は自分が握る。これは出世における重要な条件だ。開店前にキャストと食事してから一緒に店へ行く同伴の場合、8割のカップルはキャスト側が主導権を握って、待ち合わせ時間から食事の店まで決める。残り2割は男性側が主導権を握って自分のペースでキャストをリードする。新冨氏は、「出世する男性とは、間違いなくリーダーシップを発揮できる2割のほうでしょう」という。

同じ主導権を握るにしても、店が終わってからキャストと個人的に飲食する「アフター」好きとなると、話が変わる。深夜2時、3時の繁華街を徘徊するのだから、翌日の仕事には確実に響く。それでも女の子が好きでアフターがやめられないというのでは、状況判断ができないか、意志が弱い人物ということになる。

■若い女性を好む人は出世の見込みが薄い

では出世する男は、どんなキャストを好むのか。例えばこれから経営陣の一角を目指す位置にいるような50代は30代の女性を好む。クラブと違って一般にキャバクラのキャストの年齢は低く20代前半が中心。30代といえばベテランだが、新冨氏によれば、「出世する男は若い子を好まない傾向がある」という。年齢のギャップがあって会話が成り立たないという理由もあるし、クールダウンのために来ているのだから落ち着いた雰囲気を求めるということもある。

こうした男はナンバークラス(指名数1位の座を争う人気キャスト)を前にしても堂々としているという。指名したキャストが別の席へ移動したとき、場つなぎにナンバークラスが接客することがある。彼女はタレントも顔負けの美人だし、話もうまいし、オーラも発している。でも器の大きい男は、怖じ気づくことなく相手のオーラを呑み込んでしまう。へりくだることもないし威張ることもない。逆にナンバークラスを前にするとどぎまぎしてしまう男は「器のサイズ」に問題ありと考えたほうがよさそうだ。

クラブは滞在時間無制限だが、一般的なキャバクラは基本セットの60分が終了すると延長に入り、以降60分ずつ料金が加算されていく。入店時は一回延長して帰ると決めていても、酔ってくると気が大きくなって延長を繰り返す。これが普通の男だ。

出世する男は違う。

だらだら飲むことはない。酔っぱらって内容のない話をしても時間のムダと心得ているから一回分だけ延長して2時間で切り上げる。

「それは人生スケジュールができているからでしょう。週に一回、この時間は気分転換のために飲むと決めているから、時間が来たら切り上げて、家族のもとに帰ることができる。こういうできる男ばかりが来店すると店は儲からないけどね」(新冨氏)

このように出世する男の条件を集めていくと、ある人物像が浮かび上がる。

性格は真面目で誠実で驕らない。周囲に気配りができて状況判断能力に優れている。リーダーシップを発揮して行動し物事に動じない。酒を飲んでも自分を律することができる。日々の生活では人生設計ができていて、それを守る強い意志がある。

すべての条件を備えることは難しいかもしれないが、一つずつ身につけていく努力はしたい。加えて夜の酒席にはその人物の器量が如実に表れることを肝に銘じておこう。

※すべて雑誌掲載当時

(ジャーナリスト 山本信幸=文 小原孝博=撮影)