有名女子高では4割!?医学部志望女子急増の意外なワケ

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 夏休み入りとともに、いよいよ受験生も勉強の追い込み時期に入る。

 2013年入学の受験戦線で特徴的なのは、今年に増して女子高生の医学部志望熱が高まっていることだという。

 旺文社がこの5月に発表した「2012年国公立大入試 志願者動向分析」を見ると、昨年11年を100とした場合、全体で98とやや志願者減となっている中で、国際・国際関係系統が135とダントツの志願者増となっている(東京外国語大学に国際社会学部が創設されたことで人気が出た)のを除くと、昨年より志願者を増やしているのは、

 ・薬学系統:111
 ・医学系統:106
 ・歯学系統:105
 ・農・水・獣医系統:104

と理系学部がほとんどで、ほかでは前年度比プラスは家政・生活系(栄養関係も含む)の107のみだ。理科系でこそないが、これも資格系ではある。

 センター試験のここ3年の理系受験者は、

 ・10年:17.6万人
 ・11年:18.5万人
 ・12年:19.3万人

にまで増えている。

理工系学部は不人気

 予備校関係者によると、こうした医学部を含む理系各学部の志願者増は、以下の理由によるものだという。

「いわゆる理系女子が増加していることが第一。しかし、同じ理系でも企業や研究機関など、男性が多い職場が就職先になる理学部、工学部は敬遠され、就職に有利で女性というハンディが比較的少ない資格系が中心に選択されている。資格系のナンバーワンといえば医学部。女子校も含めて、中高一貫校の親の職業を見ると、25〜30%が医者といわれているから、成績の優秀な女子高生が医学部、あるいは歯学部を選ぶのはごく自然でしょう」

 つまり女子の理系受験者増が資格系各学部の志願者増の主因であり、医学部でも同様だというのである。桜蔭、女子学院、豊島岡、あるいは関西の神戸女学院などの有力女子校では、すでに医学部志望者が3割から4割に達するという話もある。男子校の灘、ラ・サールなどと、その点では同じだという。

 このように医学部を含め資格系が人気なのは、国家資格あるいはそれに準ずる資格を取得しておけば就職に有利だし、失業率が高止まりし、就職難民が増殖している時代にあっても、まず食いっぱぐれることがないという考えがあってのことだ。就職の面倒見のよい大学が、多くの受験生を集めているのと同じ要因と見てよい。親もそういう進路を勧めるということだ。そう見ると、待遇の悪いことで知られる福祉系こそ人気離散気味だが、同じように待遇では必ずしもいいとはいえない看護系でも99と平均を上回るし、ましてや高給で知られる医師や歯科医師に人気が集まるのも当然ということになる。

「医学部人気はもともと高かったのだが、08年以降医師不足が社会問題化し、国公立大学の医学部の定員が増やされ、受験が軟化したということから、11年入試以降急激に受験生が増えだし、つれて試験も難化していった。しかも先にも触れたように、女子高生の志望者が着実に増えており、それがさらに難化に輪を掛けている。飽和状態になったと見られて一時は受験人気が離散した歯学部や、4年制から6年制に切り替わりコストの割にパフォーマンスが悪いと受験生が大幅に減った薬学部も、国公立系を中心に医学部の難化を避けて志望変えした女子受験生が増えているために、志望者数が増えている」(前出の予備校関係者)

資格としてしばらく持ちそうなのは医師くらい……

 大手予備校・河合塾が、12年センター試験の学部系統別動向の男女別数字を出しているが、女子は医学部が前年比110、歯学部が121、医療技術他も105となっている。この調査では、理学部107、工学部109、農学部102と、理系全体に女子志望者が増えている。13年では、そのあたりがさらにどうなるかだが、

「資格系学部、ことに医学部の場合は、今後数年は人気が続くと見て間違いない。薬学部は、ドラッグストアなど、選ばなければまだ数年は就職口があるが、コストパフォーマンスは必ずしもよくない。歯学部は医師過剰がはっきりしていて、すでに私立は定員割れが常態化している。資格として今後しばらく持ちそうなのは、医師くらいですから」

と予備校関係者は口をそろえる。

あの人気テレビドラマも原因?

 この女子高生の医学部志望者の増加に関して、面白い話を聞いた。

 NHKの朝の連続ドラマ『梅ちゃん先生』が好評なことから、「私もお医者さんになる」と医学部志望に変えた女子高生が増え、それが13年受験の医学部志望者急増につながっているというのだ。

 確かに、堀北真希さん主演のこのテレビドラマは、展開が速く、視聴率も7月に入ると23%まで上がっており、朝ドラとしては近年にない人気だ。しかし放映している時間帯は、高校生や受験生が学校や予備校に行っているころだ。本当だろうか?

「ないとは言えませんよ。それに、話としてはとても面白い。けれどもわれわれの調査では、その関係は証明できませんね」と、先の予備校関係者は苦笑する。医療ジャーナリストも、「噂として聞いたことがありますが、確証はありません。ただ、ヨーロッパ各国で医学部生の6〜7割が女性、アメリカでも5割を超えている。梅ちゃん人気かどうかわかりませんが、今後とも女性の医学部進学が増えるのは間違いないでしょう」

 それはともかく、一言付け加えておきたいのは、梅ちゃんには医者になる動機がしっかりあった。そして地域の人たちに役立ちたいと考え、開業医となった。しかし、受験勉強に終始し、ただ成績がいいから、将来が安泰だからと医者の道を選ぶというのはどうなのかと思う。もちろん男女を問わずの問題だが。

 医者志望の子どもを持つ、有名受験校の父母のあいだで交わされるネットでの対話などを見ると、こういう人たちの子どもにだけは診察してほしくないと思うほど、厚顔かつ傲慢極まりないものだから。巨額の国費補助を受けておきながら、勝手気ままに医業を途中で放棄されたのではたまらないということもある。
(文=清丸恵三郎)