正確に時間を測るのではなく、全部が泡で埋まってなくなるまでの変化を楽しんでいただきたい。

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なんか妙に心地いい音って、ないですか? 例えば、メトロノームの規則正しい音。「カチッ、カチッ、カチッ」という音色とリズムが、私に安らぎを誘ってくれる。
あと、あの音も好きだ。砂が流れる音。海辺で寝転んでいる時に聴くことのできる、「サラサラサラ……」っていうアレです。砂時計で時間を測っている時も、おんなじ音が聴こえるなぁ。

でも、この時計で「サラサラ」という音はしない。何しろ、入っているのは砂じゃないから。デザイナー・寺山紀彦氏が制作した『awaglass』は、砂時計ならぬ“泡時計”なんです。

それにしても、どうしてこのような時計を作ろうと思ったのか? 開発のきっかけを伺ったのだけど、その歴史はまさに連想ゲーム。
まず最初、寺山氏は掛け時計の制作を目指していたそうだ。そこから「時間ってなんだ? 時間は目に見えないから、物に落とし込んで表そう」→「見て楽しむのは標本だ。よし、蝶を入れてみよう」→「時間のアイコンといえば砂時計だから、ガラスの砂時計の中に蝶がいるのは面白いかもしれない」→「標本には変化がないから、元々持っている時間が短いのではないか? 蝶の単体では時間が短い」→「常に変化して形のないものには多くの時間がある」→「泡は形状が変化していく姿が綺麗なので見てしまうし、持っている時間も長い」→「砂時計の構造だと泡が生まれる過程も見せることができるから、多くの時間を持っている」
……という長い紆余曲折を経て、現在の形に辿りついたという。

ところで、この容器の中に入っている物体について。泡立ちのいい洗剤か何かかと思いきや、大ハズレだった。この泡時計に詰め込まれているのは、ちょっと特殊な「シャボン水」だそうです。要するに、シャボン玉で遊ぶときのアレ。
しかも、このシャボン水はスペシャルである。泡時計がきれいに“ポコポコ”してくれるよう、デザイナー自ら四苦八苦して特別に配合した専用の液体らしいのだ。

それだけじゃない。この特性シャボン水が泡時計の真ん中のくびれを通過すると……アラ、不思議。ポコッ、ポコッ、と泡が上へ上へと昇っていく。まるで、鯉の滝登りみたい!
確かに砂でも水でも下に落ちれば、その分だけ下から上へ空気が上がるのは当たり前。しかし、それに留まらない。落ちるだけではなく、上がっていく空気の方に着目してみせた。文字通りの、“逆転の発想”じゃないですか!

あぁ、そうそう。肝心なことを聞き忘れていた。この泡時計を使うと、どの程度の時間を計ることができるのか?
「砂時計の職人さんに一個一個手作りをして頂いているので、時間はそれぞれ全部違います。早いものですと、10数秒から5分くらいまで様々。また形状と水の表面張力の関係で、逆さにすると時間が変化します」(寺山氏)
要するに、正確な時間は計れないようだ。「ポコッ、ポコッ」と気持ちのいい音と、泡の出来上がる光景。全部が泡で埋まってなくなるまでの変化を、この時計で楽しんでいただきたいそうだ。

そんな『awaglass』は、オンラインストア