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仕事の能力か、上司との関係性か……すべてにおいて変化の著しい現代のビジネスシーンで出世するためには、どんな能力が必要なのか? 各年代ごとに求められる、出世のための条件を考える。

■抜擢昇進がある一方降格人事もあり

人事コンサルティング会社パーソネル・ブレインの二宮孝代表取締役は「IT産業など情報社会の進展やグローバル化による経営のスピード化を背景に昇進年齢が早くなっている。外資系企業では30歳そこそこで課長というのは珍しくないし、日本企業も年功的昇進を廃止し、若くして課長に抜擢しようという企業が増えている」と指摘する。

昇進の早期化により、先輩を追い越して課長になるという“下克上”現象はもはや珍しくない。もう一つの変化は人事制度の変更により、抜擢昇進もあれば降格もあるという仕組みの導入である。彼なら課長の職責が果たせると見なせば若くして課長に抜擢する一方、逆にその任を果たせなければ降格するというように柔軟に役職を変更する。

「私は役割変更と呼んでいるが、人間としては平等でもその時点のミッションで役割を変えるというもの。したがって役割を降りても一生干されるわけではなく、再び浮上することも可能な再チャレンジの機会も与えられている」(二宮氏)

同様の制度を導入している医療機器メーカーでは課長職の場合、5段階の人事評価ランクで、2年連続で下から2番目の評価を受けるとイエローカードが発行される。3年目も同じ評価ないし一番下のランクの評価を受けると降格の対象になる。同社の人事担当者は「役割に見合った能力を発揮していないということで落としている。1ランク下の役割に落とすが、過去には2ランク下に落ちた社員もいる。もちろん、その後、再チャレンジして昇格した人もいる」と語る。

2つ目の変化は、事業規模の縮小や組織のフラット化に伴うポストの減少である。右肩上がりの成長が続き、事業規模が拡大していた時代はポストも増加したが、もはやそんな時代ではない。

「ポスト削減の傾向にあるのは間違いない。そうなると組織を統轄するライン長は一人で十分なので、ライン管理職になれない人の処遇が大きな課題になっている。現在、企業が取り組んでいるのが管理職の複線型、つまりライン管理職ではないが、スタッフ管理職ないしは専門職課長として処遇するものだ」(二宮氏)

たとえばベネッセコーポレーションは社員の等級をプライマリ、アドバンス、シニアの3つのグレードに集約し、シニアの中にライン管理職だけではなく、専門職として活躍する人も含めた。改めて管理職を「部下を持つ人事管理責任を負う人」と定義し、管理職に任用された人は「管理職加算」という別枠で管理職手当を支給している。これは管理職が特別な存在ではなく、あくまで一つの役割と柔軟にとらえることで、専門職としてのスキルを伸ばしたいという社員の意欲を持たせようという仕組みでもある。

3つ目の変化は年功色が崩れたことによる給与格差の拡大である。かつては、入社後は一定の年数を経なければ上の等級に上がれないという年次制限を設けていたが、多くの企業は撤廃し、逆に優秀であれば2ランク上の等級に上がる“飛び級”度を設けているところもある。

大手企業でも入社10年もすると、毎年の人事考課により実力差が歴然としてくる。かつては昇給・昇格においては横並びであった同期だが、今は先頭集団(第一選抜組)と最後尾の社員とでは給与・昇格格差が大きく開くようになっている。

国内市場の成熟化、グローバル競争の加速など経営環境の変化がビジネス・パーソンの昇進にも大きな影響を与えている。その一つが昇進年齢の若返りである。

「入社当時の団子状態から格差が開き、最終的な給与も開くようになる。大企業でもボーナスに差をつける年齢も早くなっている。中小の場合は、大企業ほど過去に縛られないために、入社時の初任給は一緒でも、その後の昇給額は大胆に差をつけるし、ボーナスはさらに差をつけるようになっている」(二宮氏)

大手流通業の人事担当者は「入社後6〜7年も経ると、役割やポストで給与が大きく違ってくる。当社の30歳の平均年収は500万円だが、下は店舗の一担当の350万円から上は店長の1000万円を超える社員もいる」と指摘する。

4つ目の変化は女性社員の積極的な管理職登用である。

「電機などあらゆる消費財の利用者の多くは女性であり、女性の視点に立った開発も重要になり、女性の戦力化を図る企業が増えている。実際に課長や部長への登用など女性活用が進んでいる企業ほど業績もよいという調査もある」(二宮氏)

ただ女性社員に関しては産休や育休の問題もある。会社が長期休業後の復帰を認めるだけあって、複数回の産休・育休を取る社員は能力の高い社員が多く、会社としても周囲に不公平感を与えず、産休・育休を取る女性社員をどのように処遇すべきか、頭の痛いところだ。

いずれにせよ、今後、男性優位の“管理職市場”に女性の進出が一層進むことは間違いない。昇進レースは極めて狭き門となりつつある。

※すべて雑誌掲載当時

(ジャーナリスト 溝上憲文=文 小原孝博=撮影)