もっと効率的に勉強する! 予習の効用






学生さんはもちろんのこと、社会人になっても語学や資格取得などで勉強しなくてはいけないことは多いもの。そこで今回は脳科学者の塩田先生に、脳の仕組みに基づいた、効率的な勉強法についてお聞きしました。



■集中力を高めるには10分の予習が有効



――先生、効率的な勉強法で、最も大事なことって何ですか?



「私がよく言っているのは、もっと予習を大事にしなさいということ。皆さん復習はしますが、予習はおろそかにしがちなのではないでしょうか」



――でも、まだ授業で習っていないから、分からないことも多いです。



「それでいいんです。むしろ、分からないことが大事。予習ではテキストを読んで、疑問点や難しいところ、よく分からないところ、新たに出てくる用語などを色ペンでチェックしておくだけでいい。こうしておくと、授業中、そこで集中力が高まるからです。



脳は、分からないものや未知のものに対して非常に敏感に反応するようにできています。野生動物でも、向こうから何か来る、敵かどうか分からないとなると命にかかわる問題ですから、とても困りますよね。『分からない』という状態から早く脱却したい本能があるので、『これは何だろう?』と集中力が増すんです。



あらかじめどこが分からないかを知っておけば、授業中、先生がそこを説明するときに脳がフル回転して、理解力・注意力も高まるし、記憶にも定着しやすくなります。また、長い授業時間中ずっと集中していることは難しいですが、これなら、自分の弱いところを集中して聞くことができるというわけです」



――予習がそんなに大事だなんて、盲点でした!



「復習の時間を削ってもいいので、必ず予習をしておくことをおすすめします。授業で分かったようなつもりになって、何となく復習するよりずっと効率がいいです。問題の演習など、ある程度復習で身につけるべきこともありますが、まずは理解できなければ何にも始まりません。理解力を高めるには、予習が一番です。



これは社会人も同じ。講習などの前にはテキストや資料にあらかじめ目を通しておくとか、ネットで情報を集めておくといいですよ。



また、集中力を高める方法として、先生に質問に行くのも有効です。わざわざ質問に行って1対1でとなると、集団の授業よりも緊張して、集中力が高い状態になるからです。通信教育や自習もいいですが、できるだけ、先生が目の前にいるほうが集中はしやすいです」



■時間を区切る・繰り返す・アナログ手法がおすすめ



――受験生などは一日中勉強しますが、どうやって集中力を持続させたらいでしょう。



「50分やって10分休憩の1時間単位にするとか、やはり時間を区切るべきですね。



あと、脳の同じ部分を使い続けることを避けるために、同じ教科を続けて勉強しない。例えば、歴史などの暗記ものは記憶をつかさどる海馬、物理や数学などの論理的思考が必要なものは前頭前野をよく使いますので、同じ部分を使い続けると疲れてしまう。



同じ教科を集中的に勉強したいなら、英単語(暗記)、長文読解(論理的思考)を交互にするなどするといいでしょう」



――よく聞く受験テクは、脳科学の視点からも正しいのですね。では、暗記しやすい勉強ってありますか?



「一度に細かく正確に覚えようとしないで、最初はざっくりでいいから何度も繰り返したほうが記憶に定着します。例えば英単語を200覚えたいなら、20ずつ10日よりも、毎日200を10日やったほうがいい。



一例ですが、CDやDVDなどの音声教材を流しっぱなしにしながらテキストを読む、などのやり方なら、一日200の単語を勉強することも可能です。



特に語学は繰り返しが有効。母国語を覚えた時は、最初はよく分からなかった言葉も、とにかくたくさんの言葉に繰り返し触れていたはず。それと似た状況を作るといいです。



また、テキストを目で追うだけでなく、手で書くとか口に出して読むのも有効です。脳のいろいろな部位を使うので、やはり記憶に定着しやすい。今は便利なものがいろいろありますが、アナログのほうが忘れにくいです」



――やっぱり、ある程度苦労しないとダメですね……。



「スピード勝負の調べ物などには便利なものをどんどん使うべきですが、記憶を定着させるには、苦労したほうがいいです。例えば、電子辞書より本の辞書のほうが手でめくった感覚が脳に伝わり、理解力や記憶力も増すでしょう。



あと、現代人は、深くものを考えるということが減っているように思います。あふれる情報を処理することに忙しくて、一つのテーマをとことん考え抜く機会が少ないと、脳が活性化することが減ってしまいます。



たまには哲学的な問いをとことん考えてみるとか、名著と呼ばれる古典を読んでみるとか、知らない人と会話するとか……。パズルのように、知識はさほど必要としないけど頭を使う遊びもいいですね。上手に脳をリフレッシュしながら勉強すると、より効率的です」



――ありがとうございました!



(取材・文/島田彩子)







塩田久嗣(しおた・ひさし)



1962年生まれ、脳科学者。ブレインサイエンス・ラボラトリー所長。京都大学卒業後、脳や心の研究に従事し、それまでの脳科学の常識を覆す「感情量」という独自の概念を提唱している。人気携帯サイト『男子脳×女子脳』の企画・監修をはじめ、執筆活動やテレビ、ラジオ出演も多数。おもな著書に、『99.9%成功する脳の使い方』(中経出版)、『"成功脳"の秘密がわかった!「扁桃(へんとう)体パワー」が幸せを引き寄せる』(徳間書店)など。