唯一本能にダイレクトに届く情報、「ニオイ」と恋愛の関係




「ニオイは恋愛にとって、非常に重要な要素」とおっしゃる、脳科学者の塩田久嗣先生。それっていったいどういうこと? 詳しくお話をお聞きしました。







■『生理的に無理』『なぜか好き』はニオイのせい!?



――ニオイというのは、フェロモンのことですか?



「実は人間の場合、フェロモンの存在はハッキリと確認されていません。ただ、ほかの動物同様にあるだろうとは言われていますし、フェロモンでなくとも、その人のニオイというのは、恋愛において相手のことを知る重要な情報になります」



――こういう系統のニオイが好きとか……?



「ある程度の傾向はあっても、『まさにこのニオイが好き!』という、ピンポイントなものが大きいです。

例えばブルーチーズのニオイが好きでも、ブルーチーズによく似た別のもののニオイはダメだったりする。ニオイの好みというのは非常に繊細なものです。



本人に自覚があってこのニオイが好きというものもありますし、無意識で生理的に受け付けない・受け付けるということもあります。一目ぼれなどにも関係があるかもしれません」



――なぜニオイの情報がそんなに重要なのでしょうか。



「嗅覚(きゅうかく)というのは、五感の中でも、ちょっと特殊な伝達方法をしているからです。嗅覚(きゅうかく)以外の感覚は、脳の中で、それぞれの感覚を処理する部分(視覚なら視覚野)を経由して、次に理性をつかさどる前頭葉、そして最後に扁桃(へんとう)体という部分へ到達します。



しかし嗅覚(きゅうかく)だけは、ダイレクトに扁桃(へんとう)体に届きます。扁桃(へんとう)体は大脳辺縁系の一部ですが、大脳辺縁系というのは人間の情動にかかわる部分。



つまり、ニオイの好き・嫌いは、理性に関係ない、本当の自分の好みが反映される。理性の中には、世間一般の価値観だとか、先入観も含まれますから、無意識に他人の評価を取り入れてしまうものです。



ニオイのように、理性に左右されない心の声が選ぶ相手は、相性が良いことが多い。それを無視してしまうと、簡単に別れてしまうこともありえます。『生理的に好き・嫌い』というのがあるでしょう? 人間は動物ほど嗅覚(きゅうかく)が発達していませんが、こういう説明できない好みには、無意識でニオイで判断していることも多いと思われます」



■ニオイを利用して恋愛上手になれ!



――例えば、香水などで良いニオイにしてもいいんでしょうか。



「本当は、ありのままのニオイを好きになってくれる人を探すのがベストです。臭いニオイでもそのニオイが好きだという異性はいるので、そういう人を見つけられれば一番相性が良く、長くつき合えます。



ただ、あまりに特殊なニオイだったりして、それにひかれる異性が少ないとなると生存競争に不利です。香水なども含めてのニオイの情報ですから、そうしたアイテムを使う作戦もアリだと思いますが、ボロが出ないようにしないといけません。



本当に相性のいい相手だったら、加齢臭も気にならないんですよ。だんなさんの加齢臭をすごく嫌がる奥さんもいれば、そうじゃない人もいるでしょう」



――難しいですね……。



「動物によっては、一度この相手・このニオイと決めたら、ほかの異性に全く反応をしないという種もいます。

プレーリーハタネズミというネズミは、オスもメスも、生涯同じ相手としか交尾しません。相手が死んでも、新たなパートナーを探すことはない。これは、最初の相手のニオイをしっかり記憶していて、ほかの個体に興味を示さないためと言われています。



動物にとってニオイの情報がどれだけ大事かというのは、ほかの感覚と比べてみても分かります。視覚は物に隠れたら見えないし、聴覚も足音をたてない敵などがいます。触覚や味覚は、直接接触しないと分かりません。



嗅覚(きゅうかく)は、遠い所からでも天敵や餌の情報を得られるものですから、命の維持にすごく重要な感覚で、敏感に反応するんです」



――動物より嗅覚(きゅうかく)が劣る人間でも、臭いものってすごく不快で気になったりしますよね。ガス漏れとか、満員電車の隣の人のニオイとか。……そう考えると、ネットでのお見合いなんかは、リスクが大きいですね。



「今の時代、出会いのきっかけとしてならいいのですが、早めに会って印象を確かめておく必要はあるでしょうね。やはり人間同士、直接会うのは大事です。



恋愛以外でも、微妙なニオイの違いで、無意識で何かを選んでいることはたくさんあると思います。良い人なんだけどウマが合わないとか、仲良くなるタイプじゃないのにこの人とだけは腐れ縁だとか。現代人は、もっとそういう自分の感覚を信じてもいいんじゃないかなと思います」



――ありがとうございました!



(取材・文/島田彩子)







塩田久嗣(しおた・ひさし)



1962年生まれ、脳科学者。ブレインサイエンス・ラボラトリー所長。京都大学卒業後、脳や心の研究に従事し、それまでの脳科学の常識を覆す「感情量」という独自の概念を提唱している。人気携帯サイト『男子脳×女子脳』の企画・監修をはじめ、執筆活動やテレビ、ラジオ出演も多数。おもな著書に、『99.9%成功する脳の使い方』(中経出版)、『"成功脳"の秘密がわかった!「扁桃(へんとう)体パワー」が幸せを引き寄せる』(徳間書店)など。