睡眠にまつわる都市伝説を内科医が検証




日本人の20%が睡眠について不調を抱えている、と言われます。そんな中、睡眠にまつわる言い伝えや都市伝説などをよく耳にしますが、本当のところはどうなのでしょうか。

内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生にそれらの真意についてお話を伺いました。



■伝説1・眠り始めの3時間ぐらいが大切!?



メカニズムとして、正しいのでしょうか。

「健康な人の睡眠には、眠りが浅いレム睡眠と、深いノンレム睡眠という状態があります。この2つを合わせて約90分を1サイクルとし、起床まで繰り返すわけです。



そこで、最初の2サイクル(約3時間)、いわゆる寝入りばなのノンレム睡眠からレム睡眠へのスムーズな移行がその後の周期、睡眠のリズムに影響すると言われています。



また、体の成長や疲労回復に欠かせない成長ホルモンは、入眠後最初にくる深い睡眠時、つまりノンレム睡眠のときに最も多く分泌されます。このことからも、眠ってからの3時間までに深い睡眠に入ることが良質な睡眠と言えるのです」(泉岡先生)



■伝説2・一晩で3時間程度の短眠でもぐっすり眠ればOK?



いわゆるナポレオンの短眠伝説は本当でしょうか。

「『平均寿命と睡眠時間には関連があり、睡眠時間が7〜8時間の人が最も平均寿命が高い』という医学的な研究結果があります。



これをふまえ、医学的に、人間は最低限4時間の睡眠が必要と言われています。最適な睡眠は生活環境とともに個人によって異なりますが、質とともに量、つまり時間も重要です。

睡眠時の心身の働きを考えると、継続的に健康な状態を維持するためには、3時間では量が不足しています」(泉岡先生)



■伝説3・食べたあとすぐに寝ると牛になる!?



子どものころに散々言われたこの言い伝え。根拠はあるのでしょうか。

「もちろん実際に牛になるわけではありませんが、食後すぐの睡眠は太りやすくなる、という意味でそう言われているのでしょう。



これには、全身の機能を調節する自律神経が深くかかわっています。自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあり、切り替わりながら相互に働き合っています。

そのうち、睡眠時や食事中など、心身共にリラックスしているときに働くのは副交感神経のほうですが、これが強く働くと胃腸の消化吸収力が高まります。



ですから、食後すぐに寝ると消化吸収力が高まり、それだけ栄養分が蓄えられて太りやすくなると言われるのです」(泉岡先生)



■伝説4・寝る直前の入浴は体に悪い!?



風呂で温まったらすぐに眠りたいのですが、入浴直後の睡眠は熟睡できないと聞きます。

「人の体温にはリズムがあり、夜には下がり始めて早朝には最も低くなり、その後、昼から夕方にかけて高くなります。夜は体が睡眠への準備をしはじめて、体温が下がるのです。



睡眠の状態は、この体温のリズムに影響を受けます。

風呂上りにバタンキューと寝ると、就寝中に体温が下がって風邪をひく、というのはよくあることです。

睡眠直前に熱いお風呂に入ると交感神経が刺激されて体の準備と逆行します。ですから、就寝したい時間の約1〜2時間前までに入浴し、ほてりが冷めたころ布団に入るのがぐっすり眠るコツです」(泉岡先生)



■伝説5・日光を浴びるとよく眠れる!?



日光というと紫外線対策として避けられがちですが、浴びたほうがよく眠れるというウワサはどうなのでしょうか。

「日光にあたることによって、感情のコントロールにかかわる『セロトニン』という物質が体内で作られます。このセロトニンは、分解されて睡眠を促す『メラトニン』に変化します。



ですから、日光を浴びる時間が長いほど、快眠を得やすくなります。



寝つきが悪いという方は、朝の通勤時にひと駅多く歩く、ランチの時間に外に出て歩くなどして、日光浴をすることをお勧めします」(泉岡先生)



■伝説6・トシとともに寝つきは悪くなる!?



20代同士でも「眠りが浅い」、「年では?」という会話をよくします。

「睡眠時に分泌される『メラトニン』は、抗酸化作用や免疫機能を高める働きもある物質で、いわゆる若返りホルモンと言われています。



その分泌量は、10代後半から徐々に減少します。このことから、年齢を重ねるごとに、不眠の症状が現れやすい、眠りが浅くなる、夜中に何度も目が覚めるなどということと関係していると考えられています」(泉岡先生)



数ある中から6つの伝説を検証しましたが、睡眠のリズムのことを始め、寝入りばなが大事、睡眠の約1〜2時間前に風呂に入る、日光を浴びるなど、いずれも快眠へのヒントとなりそうです。



監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医。大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。

泉岡医院 大阪市都島区東野田町5-5-8 JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分

TEL:06-6922-0890 http://www.izuoka.com/



(岩田なつき/ユンブル)