試合 :ロンドン五輪 準々決勝
開催日:2012年8月3日
結果 :日本代表勝利
スコア:「2−0」
得点者:大儀見優季 大野忍

○ なでしこジャパン

FW:大儀見優季 大野忍
MF:川澄奈穂美 宮間あや
MF:澤穂希 阪口夢穂
DF:鮫島彩 熊谷紗希 岩清水梓 近賀ゆかり
GK:福元美穂

FW:高瀬愛実 安藤梢
MF:川澄奈穂美 宮間あや
MF:澤穂希 阪口夢穂
DF:鮫島彩 熊谷紗希 岩清水梓 近賀ゆかり
GK:福元美穂


試合開始から攻勢に出たブラジル。それに対して日本はなかなか上手く対応できず、かなり苦しい時間帯が続きました。しかしそれでも、自分たちのサッカーができなくても、頑張って耐え凌ぐ事ができれば、やはり必ずチャンスは訪れる。後は、そのチャンスで決められるのか決められないのか、それだけですね。大儀見のシュートも、大野のシュートも、とても冷静で、尚且つ、とてもテクニカルなものでした。堅守から、相手の意表を突くリスタートと鮮やかなカウンターで2得点。素晴らしい勝利だったと思います。

ブラジルの選手の個の突破力には苦しめられました。また、サイドからのクロスボールにも苦しめられました。しかし、それに対して日本は、運動量(粘り強さ)と組織力(アタック&カバーの連携)で対応。また、CBの岩清水と熊谷を筆頭に、SBも含めたDFラインの選手が最後のところではやられない強さを発揮し、日本のゴール前の守備は本当に堅かったですね。もちろん、GK福元も良かったと思います。高い組織力と、勝てなくても簡単には負けない個の局面での競り合いと、その2つがあれば、必ずメダルには手が届くと思います。

そして、戦い方としても、なでしこジャパンは、この試合で1つの成長を見せました。ビルドアップから、繋げるのであれば繋ぐ、という事は絶対ではありますが、しかし、もしそれが難しい試合となったならば、相手のハイプレスを避けて、躊躇無く前へ前へと長いパスを蹴り、その間の時間を使ってDFラインを上げ、コンパクトを再構築し、少しずつ相手を自分たちのゴール前から遠ざけるようにする。それが自分たちらしいサッカーであるかどうかは関係無く、それがセオリーであるならば、そのセオリーをきちんとやる。

また、ビハインドの状態となれば、相手は必ず守備にリスクを負って前掛かりになりますから、そうなったら徹底的にカウンターだけを狙えば良い。ポゼッション率(ボール支配率)は勝敗に大きく関係しませんから、やはりそこに固執する必要は無い。残念ながら、どんな相手や状況であってもポゼッションサッカーができる、そこまでの実力というのは、まだ現状の日本のサッカーにはありませんし、また、そうならなければ世界を相手には勝てない、大きな大会では勝てない、という事も無いと思います。

常に勝利のための最善の方法で戦う。それがポゼッションサッカーであるならそれをやり、それがカウンターサッカーであるならばそれをやる。そこはかなりシンプルだと思います。やはり、相手があるスポーツでは、きちんと相手を見て戦う、という事が重要ですよね。特に、W杯での優勝国となった日本が、再び五輪で金メダルという優勝を手に入れるためには、相手の戦い方を吸収して弾き返すような、ゴムのような柔軟性を持った強さが必要で、そういうチームになる事を、佐々木監督は、W杯後からずっと目指して来たと思います。

残りは2試合。五輪前の試合で完敗してしまったアメリカとフランスが、やはり、しっかりベスト4まで残っています。そして、そのアメリカとフランスは、日本対策をきちんとやって日本に勝利した、そういう2つのチームですね。という事は、W杯当時のなでしこジャパンでは、おそらくその2チームには勝てない、という事でもあると思います。従って、まずは日本の生命線である運動量を保ち続ける、という事は当然として、更には、相手の日本対策に対しての対策をしっかりやらないと、という事になると思います。

但し、その事に対する光明というのは、既に、この試合で見えたのではないかと思っています。1つには、澤という、なでしこジャパンのキーパーソン、その1人をとってみてもそうですが、五輪前にアメリカやフランスと戦って負けた、その時とは明らかに、日本の選手全体のコンディションやモチベーションが違う、かなり高くなっている、という事。そして、2つには、相手の日本対策としての戦い方に対して、かなり日本のDFラインの守備や全体としての戦い方が修正できている、その可能性は見えた、という事ですね。

もちろん、これは、だから日本はフランスにもアメリカにも勝てるだろう、という事ではなく、今の状態であるならば、日本はフランスにもアメリカにも互角の戦いができるだろう、という事で、あくまでも、これで面白い試合にはなるだろう、という事ですね。チャレンジャーとして、ではなく、チャンピオンとして、1つの大きな大会で戦う。その重圧や戦い難さというのは、やはり、かなりのものだと思いますが、準々決勝までは順調にやってきましたから、最後までそうなる事に強く期待したいと思います。強く信じたいと思います。