ビジネスを有利に戦う、使える確率いろいろ






仕事では、さまざまなデータを目にする機会があるもの。今回は、ビジネスで使える確率・統計についてご紹介! 数理統計学がご専門の、鳥越先生にお話をお聞きしました。



■マーケティングは確率あってこそ



――まず、ビジネスで確率や統計がよく使われている場面というのは?



「やはりマーケティングでしょう。中でも、『併売率』という指標があるのですが、これは、Aが購入されたときBも同時に購入される割合のこと。例えばシャンプーを買うと同時にリンスを買うなんてことはよくありますよね。コンビニではPOSシステムというのがあり、ある人が何と何を一緒に購入しているか、すべて記録されています」



――おにぎりとお茶を一緒に買ったら値引き!などのキャンペーンは、そういうデータを見ているんですね。



「そういう予想しやすいものもありますし、意外なものもあります。アメリカのスーパーの例だと、金曜日の夕方、ビールを買う人はオムツもよく買うというデータが出ました。そのデータを分析したところ、アメリカは週給制で金曜日がお給料日ですから、奥さんにオムツを頼まれたお父さんたちがスーパーに寄って、『明日は休みだし、ビールでも飲みたいな』と思って同時に買って行くことがわかりました。そこで両者を近くに陳列したら、売り上げがアップしたそうです。



また、本屋さんと文房具店が併設の所は多いですが、ここでもデータを元に、『キレイな字を書く方法』を題材とした書籍と、履歴書を並べて売ったら書籍の売り上げが上がったという話もあります」



――これは、いろいろな業界の販売・営業で応用できそうですね!





■「お見合い理論」で人材ゲット!?



――では、お店以外でも使えそうなものはあるでしょうか。



「鳩山元総理も研究していた『お見合い理論』というものがあります。文字通りお見合いで良い相手を見つけるためのものですが、採用の面接や取引先を決めるときなど、ビジネスの場面でも使えそうです。やり方は下記の通りです。



10人お見合いの候補がいたとします。またルールとして、おつき合いするかどうかはその人とのお見合いが終了して即決断をし、その人と決めたらそれ以降の人とはお見合いできず、断った人とも2度とお見合いできないものとします。さらには10人目までで必ずつき合うものとします。このルールのもとでの最適な戦略としては、



1.最初の3人は断る。



2.4人目、5人目では、先に会った人たちより良いなと思ったらおつき合いする。前の人たちよりイマイチなら次へ。



3.6人目、7人目では、それまでの中で2位以内であればおつき合いする。そうでなければ次へ。



4.8人目では、それまでの中で3位以内であればおつき合いする。そうでなければ次へ。



5.9人目では、それまでの中で5位以内であればおつき合いする。そうでなければ次へ。



このようにすれば、平均的に10人中3位以内の人とはおつき合いできるというものです。なおシミュレーションによる計算では、3位以内の人を選ぶ確率は約80%です」



――多くの候補をじっくり比較できず、すぐに返事をしないといけない状況で使えそうですね。最初の候補がナンバーワンだったらもったいないですけど……。



「もちろんナンバーワンを逃すリスクもあるのですが、平均以下に当たってしまうリスクは回避しやすくなるということです」





■カンを信じずデータを取り、正しい情報を読み取る



「確率・統計を利用する場合、思い込みではなくデータを見るということが大切です。最初にマーケティングの話をしましたが、季節による商品展開などで、思い込みが間違っているケースがあります。



コンビニなどの暑い時期の商品、例えば冷やし中華などは、実は8月ではなく5月に一番売れているというデータがあります。急に暑くなったことと、今まで買わなかった商品が目に入ったことで、『あ、冷やし中華が出てる』『食べたい』と、購買意欲にスイッチが入ると思われます。おでんや肉まんも、12月や1月の最も寒い時期よりも、10月や11月によく売れるそうです」



――意外です!



「誤った思い込みというのは多くて、ジンクスなどもそう。野球で、『ノーアウト満塁からなかなか点が入らない』とか言われますが、そんなことはない。データ上、8〜9割は入っていますが、ノーアウト満塁だと『当然点が入る』と思うので、点が入っても大した印象にならず、心の中の分母から除外され、入らなかったときのガッカリ度が大きくなるのだと思います。



あと『平均』という指標もそのままうのみにするのではなく、元となったデータを見ることが大切。人口約2,000人の沖縄の島で、平均の所得税額が全国の自治体の中のトップ10に入ったことがあるんです。何かすごい産業でもあるのかと思ったら、実はその島には、プロゴルファーの宮里兄弟が住民登録をしていて、3人だけで平均値を押し上げていたとか」



――すごい……。



「社会人になると、仕事はもちろん、プライベートでもデータを見る能力の必要性を感じている方が多いと思います。物を購買するときに商品の比較サイトを見て、スペックなどのデータを参考にしたりとか。



最近は中学や高校で統計が必修になっているようで、みなさんの後輩となる人材は、統計を学んで社会に出てきますよ。負けないように、ぜひ確率や統計を勉強してみてください」



――ありがとうございました!





(取材・文/島田彩子)







鳥越規央(とりごえ・のりお)。1969年生まれ、筑波大学卒業。日本統計学会、日本計算機統計学会、日本数学会、アメリカ野球学会に所属。現在は、東海大学准教授として統計学を教えながら、コラム執筆、統計監修、テレビ出演などで活躍中。著書に『プロ野球のセオリー』(共著、KKベストセラーズ)、『9回裏無死1塁でバントはするな』(祥伝社)、『確率統計序論 第二版』(共著、東海大学出版会)ほか。