【石井紘人コラム】関塚監督にあって、前任者になかったもの
関塚隆監督率いるU-23日本代表が、中田英寿や中村俊輔を要したシドニー五輪以来、12年振りとなる決勝トーナメント進出を果たした。山本昌邦監督のアテネ五輪と反町康治監督の北京五輪と散々な結果が続いていただけに、各方面から快挙という声も上がっている。
だが、Jリーグをベースに考察すれば、この結果は不思議なことではない。
反町康治監督が五輪代表監督に選ばれた時、違和感を覚えずにいられなかった。Jリーグで優勝争いをしたことがない監督が、アジアナンバーワンで、かつ世界のトップを目指す五輪代表監督に相応しいのかどうか。反町氏が率いた新潟に、浦和のミシャ・ペトロビッチ監督のような期待感があったわけでもない。山本氏に至っては、Jリーグでの監督経験は皆無。にもかかわらず、監督という大役を任された。皮肉にも、山本氏は五輪後にジュビロ磐田の監督になるのだが、五輪同様の結果に終わる。
そう考えると、川崎フロンターレで優勝争いに絡んでいた関塚監督が、前任者二人より結果を出したのは必然に思える。
もちろん、監督だけの力で勝利は手にできない。過去のチームと比べる上で、選手の違いを語らなければフェアではない。ただ、アテネ五輪や北京五輪にも、後に日本代表の中心となる逸材はいた。むしろ、チームの核に添えられなかったタレントもおり、長谷部誠は選出されていない。
関塚監督がグループリーグを突破した事実から考えれば、五輪代表監督を務める人間は、“最低でもJリーグなら優勝争い(ACL圏内)”までチームを持っていけなければいけない。あくまで、“最低でも”である。
関塚監督も川崎を優勝に導けたわけではない。カウンターの切れ味は、川崎同様にロンドン五輪でも抜群である。全盛期のジュニーニョと永井謙佑を重ねてしまうくらいだ。
反面、関塚監督の率いた川崎は警戒されると勝ちきれず、ゆえにカップ戦を含め優勝できなかった。決勝トーナメントでは、当然、日本代表も警戒されてくる。南アフリカW杯でのパラグアイ戦のような堅実な展開や、オランダ戦のような一点を追う展開になるかもしれない。そういった場面で、関塚監督に打ち破る術があるかとなると、少なくとも川崎時代には引き出しがないように見えた。
つまり、監督選びには、様々な観点からのガイドラインが必要になる。外国人枠に頼った戦術ではなく、日本人の特性に置き換えた時の可能性など、それは多岐にわたる。
関塚監督率いるチームが、ここからどのようなサッカーをみせるか。そこで、今後の指針も見えてくる。それを活かせるかどうかは、日本サッカー協会次第ではあるが。
◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
ほぼ毎日、各試合の審判レポートを自サイトであるFootBall Referee Journal(fbrj.jp)に掲載。ロンドン五輪もフォロー中で、審判員は丸山義行氏から若手まで取材。中学サッカー小僧で『夏嶋隆氏の理論』、SOCCER KOZOで『Laws of the game』の連載を行なっており、サッカー批評などにも寄稿している。著作にDVD『レフェリング』。ツイッター:@FBRJ_JP。
だが、Jリーグをベースに考察すれば、この結果は不思議なことではない。
反町康治監督が五輪代表監督に選ばれた時、違和感を覚えずにいられなかった。Jリーグで優勝争いをしたことがない監督が、アジアナンバーワンで、かつ世界のトップを目指す五輪代表監督に相応しいのかどうか。反町氏が率いた新潟に、浦和のミシャ・ペトロビッチ監督のような期待感があったわけでもない。山本氏に至っては、Jリーグでの監督経験は皆無。にもかかわらず、監督という大役を任された。皮肉にも、山本氏は五輪後にジュビロ磐田の監督になるのだが、五輪同様の結果に終わる。
もちろん、監督だけの力で勝利は手にできない。過去のチームと比べる上で、選手の違いを語らなければフェアではない。ただ、アテネ五輪や北京五輪にも、後に日本代表の中心となる逸材はいた。むしろ、チームの核に添えられなかったタレントもおり、長谷部誠は選出されていない。
関塚監督がグループリーグを突破した事実から考えれば、五輪代表監督を務める人間は、“最低でもJリーグなら優勝争い(ACL圏内)”までチームを持っていけなければいけない。あくまで、“最低でも”である。
関塚監督も川崎を優勝に導けたわけではない。カウンターの切れ味は、川崎同様にロンドン五輪でも抜群である。全盛期のジュニーニョと永井謙佑を重ねてしまうくらいだ。
反面、関塚監督の率いた川崎は警戒されると勝ちきれず、ゆえにカップ戦を含め優勝できなかった。決勝トーナメントでは、当然、日本代表も警戒されてくる。南アフリカW杯でのパラグアイ戦のような堅実な展開や、オランダ戦のような一点を追う展開になるかもしれない。そういった場面で、関塚監督に打ち破る術があるかとなると、少なくとも川崎時代には引き出しがないように見えた。
つまり、監督選びには、様々な観点からのガイドラインが必要になる。外国人枠に頼った戦術ではなく、日本人の特性に置き換えた時の可能性など、それは多岐にわたる。
関塚監督率いるチームが、ここからどのようなサッカーをみせるか。そこで、今後の指針も見えてくる。それを活かせるかどうかは、日本サッカー協会次第ではあるが。
◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
ほぼ毎日、各試合の審判レポートを自サイトであるFootBall Referee Journal(fbrj.jp)に掲載。ロンドン五輪もフォロー中で、審判員は丸山義行氏から若手まで取材。中学サッカー小僧で『夏嶋隆氏の理論』、SOCCER KOZOで『Laws of the game』の連載を行なっており、サッカー批評などにも寄稿している。著作にDVD『レフェリング』。ツイッター:@FBRJ_JP。
サッカー批評、週刊サッカーダイジェストをはじめ、サッカー専門誌以外にも寄稿するジャーナリスト。Football Referee Journalを運営。