海外の動向を日本に伝え、幹部の海外活動をサポート

ビジネスパーソン研究FILE Vol.179

株式会社NTTドコモ ていげんせい さん

国際事業部で活躍中の鄭さん。国際展示会において、ドコモの広報活動のサポートなどを担当


■お客さまのためを思って創った提案が結実。営業に大切なのは“心”であると実感

鄭さんは、日本語のスピーチ大会に北京大学の代表として参加したほどの実力の持ち主。とはいえ、初めての日本で社会人としての生活をスタートしたばかりで、2週間の新入社員研修に参加。その後は、いきなりドコモの販売代理店が運営するドコモショップでの3カ月間の接客実習となった。
「日本語の敬語をきちんと話すことができないうえに、料金体系などの知識もゼロ。一度に覚えることが多すぎて、頭がパンクしそうでした(笑)」

それでも、接客特有の言い回しを学び、鏡の前で必死に練習を重ねて、2カ月後には1人で簡単な手続きを完了できるまでに。2月からの正式配属先では、法人営業部門を希望した。
「私にとって、法人営業部門はハードルの高い仕事。でも、日本の文化や仕事を学びたくて入社したからには、困難なことにチャレンジしようと思ったんです」

法人営業部のミッションは、お客さまである企業が抱えている問題点をコンサルティングし、新規回線の契約を獲得するだけでなく、回線を利用したシステムの提案を行うなど、導入からアフターケアまでをトータルでサポートしていくこと。お客さまとの信頼関係が、何より大切だ。

埼玉支店に配属されて2カ月、先輩の異動を機にクライアントを引き継いだ鄭さんは、法人営業担当として独り立ちした。そこで直面したのが、ビジネスメールを書く難しさ。失礼のない文章を書けるようになるまで約1カ月間、上司や先輩にメールを添削してもらった。もう1つ苦戦したのが、お客さまとの会話。お客さまとコミュニケーションをとって新たな信頼関係を築いていこうにも、会話の糸口がつかめないのだ。
「それこそ、天気の話題ぐらいしか提供できず、訪問が5分で終わってしまうこともありました。でも、私に求められているのは、お客さまの要望に応えるサービスや、問題を解決するソリューションを提供すること。そう考えて、誠意を持って対応し、頂いた質問には素早く丁寧に答えていくことに専念しました」

鄭さんの頑張る姿を、クライアントも温かく見守ってくれた。法人営業を始めて約半年、自分で考えた提案がついに結実。毎月訪問していたガス会社に、提案が受け入れられたのだ。
「毎月1つだけ極端に高額な回線があることが気になり、お客さまに見直しを提案したんですが、『それなりの理由があるので、問題ない』と言われ、数カ月間様子を見ていました。でも、やはりもったいないと感じた私は、その用途を再度ヒアリングして、ほかのシステムを提案したんです」

別のシステムを利用してコストを削減するという鄭さんの案は、快く受け入れられた。
「契約額は大きくありませんが、真剣にお客さまのことを考えた結果が受け入れられ、喜んでいただけたことが、何よりうれしかったですね。この経験を通じて、営業に大切なのは“心”であると実感し、この経験がほかのお客さまとの関係づくりにも役立ちました」

3年目になると、提案内容はかなり戦略的になっていった。埼玉県で2番目に大きな取引先である飲料サービス会社に対する提案では、先方が費用面で難色を示したことを受けて、子会社も巻き込んで費用を案分するグループ全体のソリューションに変更して、契約に成功。導入だけで500万円以上となる大型受注となった。
「システム構築はシステム担当者と協働して行いましたが、お客さまからの簡単な質問には自分で答えたいと思い、システムについてもかなり勉強しました。提案から導入までの約1年、プロジェクトマネージャーとして新たな経験を積むことができました」


■海外の展示会で講演する代表取締役をアテンド。大きな仕事をやり遂げた達成感を味わう

鄭さんが次に目指したのは、日本語、英語、中国語に長けているという強みを発揮できる国際事業部での仕事。現在は、企画担当として主に3つの業務に取り組んでいる。その1つが、社内のさまざまな部門から依頼される調査を海外拠点に依頼し、情報を取りまとめる海外調査業務だ。
「調査項目が明確になっていない依頼も多いので、打ち合わせでは、案件の背景や求めている情報の最終形などを確認し、求められている情報に沿って、チームで調査項目をまとめていきます。そのうえで海外8拠点に調査を依頼。集まった情報を取りまとめて、全社員が閲覧できる調査サイトにアップしています」

もう1つの業務が、海外から来訪するVIPと自社の幹部との面会の調整やアテンド。そして、最も神経を使うのが、国際展示会においてのドコモの広報活動のサポートだ。
「海外の展示会で、弊社の代表取締役社長や役員が自社の取り組みについて講演を行うことがあります。その際の、出張手続きの手配、出展ブースの確認、講演原稿と講演時に使用するツール類の動作確認、講演記録の作成、他社VIPとの会合の調整などを行うのが私の仕事。ときには、外国政府との会談や他企業との商談・関係構築の場をセッティングすることもあります」

グローバル市場におけるドコモの存在感を強めるために海外で活動する自社の幹部を支える重要な業務であり、海外との大切な橋渡し役とも言える鄭さん。語学力はもちろん、先を見越したリスクマネジメント力も求められ、些細なトラブルも許されない緊張感の高い仕事だ。
「ポイントは、いつ起こるかもしれない事態に備えて、その案件に直接かかわっていない人たちを含め、多くの管理者に事前に連絡しておくこと。この仕事を通して、社内外の人たちと情報を共有しておく重要性を知りました」

2011年11月には、香港で2日間開催された国際展示会「MobileAsiaCongress」の調整業務を主導で担当。直前の1週間は残業が続いたが、代表取締役の講演会や海外VIPとの面会を無事に終え、大きな達成感を味わった。
「現地では、社長とお話できる機会もありました。滅多に会えない社長をアテンドできるのは光栄ですが、不手際があったらどうしようと不安でいっぱいでしたね。講演を終え、社長から『お疲れさま』と声をかけられたとき、ようやく緊張感から解放され、大仕事をやり遂げた実感が込み上げてきました」

企画担当となって1年、鄭さんが目標としているのは、新規事業の開拓だ。
「中国の巨大市場は、やはり大きな魅力。これまで、日本人の個人や法人が求めるサービス、海外における同業他社や市場の動向などを見てきました。その経験を生かし、ドコモの海外進出をサポートしていきたいと思っています。特に関心を持っているのは、ヘルスケア分野。健康管理のみならず、医療分野にまで踏み込んだモバイルサービスの中国展開に、大きな可能性を感じています」