「直線の死角」で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、その後発表した「嫌われ松子の一生」が映画化されたことなどで一躍その名を広く知られるところとなった山田宗樹さん。今回、その山田さんが「これ以上のものは書けない」と断言した大作「百年法」が発売されました。近未来、不老不死が実現した日本で「不老処置を受けた者は100年後に死ななければならない」という「百年法」が施行される、という衝撃的な内容の本作。構想に至る経緯などを伺いました。

――今回の「百年法」ですが、かなりショッキングな舞台設定になっていますが、構想、執筆にいたる経緯を教えていただけますか。

 10年くらい前に、本か何かで「不老不死は人類にとって究極の夢だ」というような内容のものを目にしたんです。そこから「もし不老不死が実現したら、その先の社会はどうなるのか」ということを考え出したのが着想のきっかけでした。その後プロットを組み始めたのですが、面白くなりそうなのに、どうもうまくいかない。そんなときに世界観の似た「イキガミ」というコミックが出て、映画化もされてしまった。それで「これは没だな」と。その時点で自分の中では一旦お蔵入りにしたんです。


――その作品が、どのようなきっかけで再び動き出すことになったのでしょうか。

 4、5年前、編集者の方と打ち合わせした際、「近未来を舞台にしたものとか書かないんですか」と言われまして。少しためらったんですがその作品のことを話してみたんです。その時のふたりの編集者が「面白いです!」と同時に言ってくださって。「没にするにはもったいないです。書きましょうよ」ということになりました。

――しかし、一度手を放した作品を再び書くというのは、苦労があったのでは?

 ありましたね。再び書くことになって、実は最初は「余計なこと言わなきゃよかった」と思いました(笑)。「大変なことになっちゃったな」という。でも着想した10年前に比べると、何冊も本を出して経験も積んでいたので、何とかなるんじゃないかな、という気持ちもありました。今回の作品は、これまでに執筆したもののすべてが生かされていると思います。

――この作品を書くにあたって、読者に向けたメッセージなどはありましたか。

 あまり「こういうメッセージをうったえたい」というのはなかったんです。僕の中にあったのは、「百年法」というアイディアをいかに面白くつくるか、ということ。その結果、政治や法律といった要素が入ってきた。一見いろんなメッセージが込められているように見えて、実はそれは僕にとっては結果でしかない。ただ、執筆している間に東日本大震災など様々なことがあったので、無意識のうちに影響しているところはあると思います。でもそれを作品に込めようとすると、本当につまらなくなってしまう。もし強く伝えたいことがあったとしたら、それを隠して書いたとしても必ずどこかににじんでくるもの。なので、あとはそれに託して、読者の方には自由に感じてもらえればと思います。

 ご自身の読書に関しては、大沢在昌さんの作品を「一気読み」してから、一気読みの楽しさが読書の醍醐味だと感じるようになったといいます。実は「百年法」の発売前に実施された読者モニターからは、かなりのボリュームの長編上下巻だったにもかかわらず「一気読みした」という声が多数きかれました。設定からして強烈なインパクトのある「百年法」、読書の醍醐味を存分に味わえそうな作品です。


■山田宗樹(やまだ むねき)
1965年生まれ。1988年『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。その後『黒い春』『ジバク』『魔欲』などを出版。2003年に刊行された『嫌われ松子の一生』は中谷美紀主演で映画化もされた。



『百年法 上』
 著者:山田 宗樹
 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
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