『マトリックス』シリーズや、待望の新作『Cloud Atlas』(原題)の監督として知られるウォシャウスキー兄弟。その兄であったラリーが、「ラナ」...つまり新しく女性として公式デビューした。そのインタビュー兼、新作映画の紹介ビデオが発表されて話題を呼んでいる。

ハリウッドの著名な監督が、トランスジェンダーとしてカミングアウトするケースはこれが初めて。(しかし特にカミングアウト・ビデオという訳ではないので、雰囲気はひたすらカジュアルだ。)

<New York Post>によれば、ラナ・ウォシャウスキーは過去数年にわたり性別移行を進めてきたのだが、タイミング的にたまたま、新作映画を宣伝する過程の中で女性としてデビューすることになったようだ。

『Cloud Atlas』にはトム・ハンクスやハル・ベリー、ヒュー・グラントなどが出演するのだが、紹介ビデオには役者は登場せず、3人いる監督が映画のことを順々に話す恰好になっている。

ピンクのドレッドロックスが可愛い彼女は、「ハーイ、私はラナです」と自己紹介する。

ラナ監督が性転換後の女性の姿で公式の場に出るのはこのビデオが最初で、弟のアンディ・ウォシャウスキー共同監督、そして『ラン・ローラ・ラン』で知られるトム・ティクヴァ共同監督と共に、楽しそうに新作の特徴を話している。

ラナ・ウォシャウスキーの私生活は、長年のあいだ、タブロイド紙のネタになってきた。

2002年には、元妻のティア・ブルームと婚前契約をめぐり、かなりの泥沼離婚を経験した、と<People>誌が伝えた。2003年にカンヌ国際映画祭に出席した際は、イベントに同伴した女性がイギリスの大衆紙に「監督はクロスドレッサー(訳注:この場合、女装者)でした」と告げて話題になった。

同年、映画ジャーナリストのデイヴ・ポーランド(Dave Poland)はオンライン雑誌<Gothamist>に、ラリー・ウォシャウスキー監督は性別移行の最中だ、という記事を寄稿した。
「私が見る限り、全ての兆しが性転換のプロセスとつながっている...(だんだん)女性のような服装をして、女性ホルモンを投与し、そして性転換手術を受けるだろう」とその時書いている。

他にも、有名人で公の目にさらされながら性別移行を果たしたケースはある。

5月には、パンクロックバンド、アゲインスト・ミーのメインボーカルを務めるトム・ゲイベル(Tom Gabel)がトランスジェンダーとしてカミングアウトし、<Rolling Stone>誌に、ローラ・ジェーン・グレイス(Laura Jane Grace)という女性として生活を始めると告白した。彼女はまだ妻のヘザーさんと結婚しており、2人のあいだには娘が1人いる。家族として、一緒に暮らし続けるそうだ。「私にとって、一番怖かったのは、彼女(ヘザー)がどう受け止めるかということでした」とゲイベルは語った。「でも、驚くほど素晴しく受け容れ、理解してくれたんです」

しかし、タブロイド紙に取り上げられることからもわかるように、トランスジェンダーの人々に対する世間の風はまだまだ冷たい(か、好奇の目に満ちている)。<Huffington Post>も、ウォシャウスキー監督がカミングアウト!ということを報じたが、その際に出したこのビデオ自体は特にカミングアウト・ビデオではない。新作映画の内容や監督の今後の活躍ぶりも、これからまた注目されていくといいのだが。

【訳注:トランスジェンダーは、ある人の「割り当てられた性」とは違う「性自認」の状態にあることを指し、特定の性的指向を有していることは必要条件ではありません。性別移行も、外科手術を望まない場合もあるので、自動的に性転換手術をした、という意味ではありません。】

<『Cloud Atlas』監督インタビュー、解説 >
<『Cloud Atlas』予告編>