「負けは負け、もう振り向くな」 ダメな心に響く名コーチのエール

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 ついにロンドンオリンピックが開幕しました。その中でも注目されている花形競技の一つが、8月5日に行われる女子マラソンです。1984年のロサンゼルスオリンピックで初めて正式種目として加わって以来、過去7大会で2人の日本人が金メダルを獲得していますが、2000年のシドニーオリンピックで初めて、種目で金メダルを勝ち取ったのが高橋尚子選手です。

 その高橋選手のコーチといえば、数々のマラソンランナーを育成してきた小出義雄監督。しかし、小出監督は多くの名ランナーを育ててきた分、たくさんの挫折や敗北も見てきました。そこには私たち普通の人間と変わらない“一人の人間としての、等身大の挫折”があります。
 小出監督の言葉を集めた『君の眠っている力を引き出す35の言葉』(小出義雄/著、すばる舎/刊)は、そうした挫折や敗北に悩み、苦しんでいる人たちに向けた一冊。ここではその中から、ダメな自分を乗り越えるための3つの言葉を紹介します。

■「練習は誰のためでもない、自分のためにするものだよ。」
 日々、自分なりに努力をしているのに、なかなか成果が出ない。「何のために自分は毎日頑張っているんだろう」と思うことはないでしょうか。その答えを小出監督流に言えば「自分のため」に他なりません。
 小出監督は大成した選手は、みんな素晴らしい人格を備えているといいます。他人に嫉妬もしないし、他人の成功を自分のことのように素直に喜べるのです。かつて、高橋選手が故障のために泣く泣く出場辞退したマラソンレースで、先輩であり、ライバルの市橋有里選手が銀メダルを獲得した際、高橋選手は「すごい! すごい!」と自分のことのように喜びました。結果を出した先輩から純粋に力をもらえる素晴らしい性格の持ち主であり、毎日の練習に裏打ちされた自信がそこにはあったのです。

■「焦らなくていい、大きな山ほどゆっくり登れ。」
 若くして活躍する同世代を見て、「なんで自分はこうなれないのだろう」とその才能に嫉妬したことがある人もいるはず。しかし、小出監督は早く結果を出そうとして焦るのは良くないと言います。
 いい選手を育てるためには、土台作りからじっくり時間をかけないとうまくいきません。大きな山を登るには、それなりの準備も、体力も必要です。一歩一歩山を登っていく。周囲に惑わされて焦っても、すぐに遭難してしまいます。

■「負けは負けだよ。もう後ろ振り向くな。」
 「あのときこうしていれば……」「運が悪かったんだ。あんなことがなければ」など、自分の人生が悪い方向に行ってしまっているとき、どうしても過去の挫折や敗北を思い出して、引きずってしまいます。しかし、いくら不運なアクシデントが重なっても、そのアクシデントが起きる前には戻れません。
 小出監督の教え子の一人である吉田直美選手は、オリンピック女子マラソン代表の選考を兼ねたレースの終盤、転倒した上に靴を脱がされ、その靴が数メートル飛ばされるというアクシデントにより、代表の座を逃します。小出監督の元には「抗議してみたらどうか」という声も届きましたが、「負けは負け」だと認め、吉田選手には「もう後ろを振り向くな」と諭しました。そして、吉田選手も「わかりました」とすっきりした表情で納得していたといいます。

 小出監督のコーチングスタイルは、選手たちを励まし、勇気づけて、その力を最大限引き出すというもの。幾多の挫折や失敗を乗り越え、その人の中に眠っている力を引き出し、最高峰の舞台に連れて行きます。
 若いからこそ、焦らずに前を向いてゆっくりと前に進む。他人と比べず、自分の行く先をしっかりと見定める。「自分ってダメだよな」と思ったままでいるのか、前に一歩進むのか、それはあなた次第ですが、自分の背中を押してもらいときに小出監督の言葉は、心に響くはずです。
(新刊JP編集部)