オリンピック放送がNHKと民放によるジャパンコンソーシアム(共同制作機構)になって、20年になるが、民放の絶叫型放送をNHKが否定していることもあり、アナウンサーの実況は、レベルが上がってきている。

まだ序盤戦だが、ここまで見た中で断トツにすごかったのは、NHKの内山俊哉アナのサッカー中継。この人は解説委員までやったあと、現場復帰した48歳のベテランだが、ボールの動きを逐一実況。選手にどのようにパスが渡ったか、どこにスペースが出来たか、選手がどこを見て走り込んでいるかを、細大漏らさず伝える。

抑制のきいたトーンで、全く乱れることなく淡々と伝える。見ているものは、刻一刻と変わっていく戦況がそのまま頭に入ってくる。

「やべっちFC」でおなじみテレビ朝日の進藤潤耶アナも良かったが、率直に言ってレベルが違う。

NHK内山アナに続いて、フジの竹下陽平アナの柔道。解説の金丸雄介とのコンビネーションがいい。日本の相手選手の得意技が頭に入っていて、どう戦うべきかを的確に話してくれる。

残念だったのが、昨日の競泳。銅メダルラッシュだったが、テレビ朝日中山貴雄アナはうるさいだけで、実況になっていない。女子100背泳ぎ寺川、男子100背泳ぎ入江、女子100平泳ぎ鈴木が、それぞれ後半で追い上げてメダルに手がかかったのだが、全部同じパターンの絶叫。「上がってきた、上がってきた」「どうだー」「銅メダルー!」。声をからすタイミングまで同じである。

映画のコントラプンクトではないが、スポーツそのものが盛り上がっているのだから、実況は抑え気味の方が現場の興奮が伝わるのだ。

全体としては、民放の実況のレベルもすてたものではないとは思うが、その質にばらつきがある。