やみくもに民主党から離党し、その先行きが危ぶまれるとはいえ、それでも衆議院37人、参議院12人の一大勢力としてマスコミの注目を浴びる小沢グループの「国民の生活が第一」。

それに比べてさえないのが、小沢グループと同じく消費税増税法案に反対票を投じて造反しながら、民主党内にとどまった鳩山グループや中間派の衆院議員16人だ。

全国紙の政治部記者がこう語る。

「“どん詰まり”です。党員資格停止中の上、連携していた小沢グループが抜けたことでますます少数になり、党内での影響力はほぼゼロ。次の衆院選では党の公認をもらえない可能性もあり、特に選挙に弱い当選1回組からは『こうなったら民主と自民に大連立してもらうしかない。そこで大連立は談合で大義がないと批判して離党に踏み切り、政界再編を仕掛けて選挙に挑む。それしか生き残りの道はない』と、ヤケクソ気味の悲鳴が上がるほどです」

造反組16人の命運はもはや風前の灯(ともしび)―。それが永田町での共通した評価だったのだ。

ところが、政界の一寸先は闇。何が起きるかわからない。どん詰まりと目されていた16人が一気に息を吹き返しそうなのだ。

そのきっかけは7月17日、民主党の参院議員3人(舟山康江・山形選挙区、行田[こうだ]邦子・埼玉選挙区、谷岡郁子[くにこ]・愛知選挙区)が突然、離党を発表したこと。

テレビ朝日コメンテーターの川村晃司氏が解説する。

「この3人の離党で民主の参院議員は88人となり、あと3人離党すれば、86人の自民を下回り第2会派に転落してしまうのです」

そうなれば、民主は参院で議長や委員会の委員長といった重要ポストを自民に明け渡すことになる。参院議長のポストを狙っていると囁かれる民主の輿石東(こしいしあずま)幹事長にとって、これは緊急事態。

「参院でこのまま消費税増税法案の採決を進めれば、第2、第3の離党議員が出かねない。まさしく民主党の崩壊です。もともと消費税増税は両院議員総会を開くなど、党の正規の政策決定手続きを踏んで決められたものではない。参院第2会派転落のリスクを避けるため、輿石幹事長が消費税増税法案の採決を見送る、あるいは引き延ばすという可能性はゼロではありません」(前出・政治部記者)

だが、そうなれば自民と公明がおさまるはずがない。消費税増税は修正協議の末に決まった3党間の公約だからだ。

「当然、自公は衆院で野田内閣の不信任案を提出することになります。民主の衆院議席数は249(7月18日時点。横路孝弘衆議院議長を除く)で、統一会派を組んでいる国民新党の3を加えても252しかない。過半数は240。ということは、野党に加え、民主党内からあと13人が造反して賛成に回れば、野田首相への不信任案が可決されてしまうのです」(前出・政治部記者)

13人! それって民主党内でどん詰まりになっていた造反組(16人)より少ないじゃないか!

「党員資格停止処分を下したことで、野田政権は造反組を干し上げたと考えていました。しかし、参院から3人が新たに離党したことで、造反組は完全に息を吹き返した格好です。野田首相や現執行部にこちらの要求を聞かなければ、不信任案が提出されたとき、再び造反に回るぞと威嚇することができますから」(前出・政治部記者)

前出の川村氏もうなずく。

「造反組の16人が野田首相に対して有効なカードを一枚握ったということ。その意味で16人の命運は尽きてはいません」

不信任案が可決となれば、その先に待つのは内閣総辞職か、解散・総選挙しかない。命運が尽きようとしているのは造反組16人じゃなく、野田首相だった?