この映画は、新しいローマ法王を決める場面から始まります。と言うとなんだか荘厳な雰囲気を想像してしまいがちですが、この映画においては、どことなく小学校の学級委員長を決めるときのようなムードが漂っています。



世界各地から集まった枢機卿(カトリック教会における法王に次ぐ高位聖職者)が、新法王を決める投票を行うのですが、枢機卿のじいさんたちがみんな、「神様!どうか私が選ばれませんように!」と切に願っているのです。それが妙に可笑しく、聖職者といえど我々と同じ人間で、基本めんどくさい事はやりたくないんだなと共感を覚えます。で結局、いかにも気の弱そうなじいさん「メルヴィル」が法王に選ばれてしまいます(この時のメルヴィルの「え、神様マジで?」的な表情と、周りの枢機卿たちの「俺じゃなくて良かったー!」的な表情はなかなかグッときます)。
ローマ法王になるという事が、果たしてどのくらい気が重い事なのか想像もつきませんが、メルヴィルの表情から察するに、エヴァンゲリオンに乗らなきゃいけないくらいの重責感はありそうです。

その重責に堪えられなかったのか、メルヴィルは、新法王お披露目スピーチを前に「やだーーっ!」とキレて逃げ出してしまいます。おまえ子供か!とつっこみたくもなりますが、自分も最近、知人の結婚式の司会を任され、本番直前に逃げ出したい気持ちになったので、メルヴィルの気持ちは痛いほど分かります。

「AKB48と重ね合わせて観れなくもない!?」
『ローマの休日』をパロった邦題なので、ヘプバーンのような女性が出てきて、ほんのりロマンスなんかもあったり?と期待する人もいるかもしれませんが、そんな要素は全くありません。出てくるキャストはほぼじいさんです。ぽっちゃりしたじいさんが駄々をこねて、周りのじいさんたちを困らせるという、わりと地味な映画です。ですが、意外にも我々日本人に親しみ深いAKB48に重ね合わせて観ることもできます。

つまり、--AKB48ならぬSKK(枢機卿)48において、前田敦子に代わるセンター(法王)を決める総選挙が行なわれ、なぜか気弱なメルヴィルが神セブンをさしおいて選ばれてしまい、ファンの前でのスピーチの直前、「あたしセンターとかムリだし!」とキレて逃げだす---、そんなアイドル青春映画としても観れなくもないです。実際、枢機卿の人たちが着ている揃いの服はステージ衣装みたいでかわいいし、メルヴィルがプレッシャーのあまり過呼吸みたいになるシーンも、どことなくAKBっぽいです。

映画中盤でいきなり始まる枢機卿たちのバレーボール大会も、なかなか意味不明なシーンではありますが、これも「SKK48 チーム対抗バレーボール大会」だと思えば、中だるみせずにこやかな気分で観られるはずです。

そんなわけで前回の『苦役列車』を若干引きずりつつの感想でしたが、この映画、ある意味衝撃的なラスト、そして観終わった後のモヤモヤ感(おいてけぼり感?)含め、1,300円の価値あり!
(※ローマ法王について多少予習してから観れば、もう少しプライスアップするかもしれません)





(c)Sacher Film. Fandango. Le Pacte.France 3 Cinema 2011

「ローマ法王の休日」
ストーリー:ローマ法王死去――。この一大事を受けヴァチカンで開催される法王選挙で集められた各国の枢機卿たちの中、新法王に選ばれてしまったのがダークホースのメルヴィル。早速バルコニーにて大観衆を前に演説しなければならないが、あまりのプレッシャーからローマの街に逃げ出してしまい...
監督: ナンニ・モレッティ『息子の部屋』
キャスト: ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル 他
上映時間: 105分
7月21日(土)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2011年/イタリア・フランス映画

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