読む鉄道、観る鉄道 (13) 『カサンドラ・クロス』 - 細菌兵器に感染したヨーロッパ国際特急の運命

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『カサンドラ・クロス』は1976年に公開された作品。

東西冷戦、第2次世界大戦の傷跡、アメリカの陰謀などさまざまな要素を織り込んだ重厚な物語だ。

登場する列車はジュネーブ発ストックホルム行の大陸縦断超特急だ。

映像風景で当時の列車旅の雰囲気に浸れるけれど、鉄道ファンならではのツッコミどころも満載である。

スイス・ジュネーブの国際保健機構に3人の過激派ゲリラが侵入。

しかし警備員に見つかり1名は射殺され、1名は身柄を確保される。

残ったひとりは窓を破って逃亡。

しかし、彼は米国が極秘に開発していた細菌兵器を浴びてしまう。

事態を知った当局は、逃亡者がストックホルム行の国際列車に乗ったと知り、対策を立てる。

アメリカ陸軍のマッケンジー大佐(バート・ランカスター)は、列車の行先を変更し、ポーランドのヤノフへ向かわせる。

なにしろ極秘開発した細菌だ。

ゲリラと、その接触者を全員隔離する必要があった。

しかしその途中には、1948年に廃線となった「カサンドラ・クロス」と呼ばれる大鉄橋があった。

老朽化した鉄骨の橋で、ホーランド鉄道当局は点検を実施しているというのだが……。

乗客のひとり、著名な精神科医のジョナサン・チェンバレン(リチャード・ハリス)は、列車無線でマッケンジー大佐から事実を打ち明けられる。

隠された意図に気づいたジョナサンは、元妻でベストセラー作家のジェニファー(ソフィア・ローレン)、登山家のサンティニ(マーティ・シーン)、神父のハリー(O・J・シンプソン)らと協力して列車を止めようとする。

その過程で、乗客たちの偽られた経歴が明かされ、人間模様も絡み合っていく。

イタリア・イギリス・西ドイツの合作映画で、撮影にはスイス国鉄ほか各国の鉄道会社が協力した。

イタリアを代表する女優のソフィア・ローレンは、『ふたりの女』でカンヌとオスカーを受賞している。

日本でも人気がある女優で、本作品の公開に前後して、ホンダのミニバイク「ロードパル」のCMにも出演、ソフィアが発した「ラッタッタ」をこのバイクの商品名だと思った人も多かった。

近年では、2007年に「ひいきのサッカーチームがセリエAに昇格したらストリップをやってもいい」と発言して話題になった……、当時73歳だけど。

ジョナサンを演じたリチャード・ハリスは、本作品で共演したアン・ターケルと結婚していた。

『ハリー・ポッター』シリーズの初期の作品で魔法学校の校長を演じた人でもある。

その息子、ジャレッド・ハリスは今年3月に日本でも公開された『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』に出演。

ハンサムな登山家を演じたマーティ・シーンはチャーリー・シーンのお父さんだ。

冷酷なマッケンジー大佐を演じたバート・ランカスターの次男は『がんばれ! ベアーズ』の脚本を手がけた。

神父を演じたO・J・シンプソンはフットボール選手から役者に転向。

元スポーツマンらしく正義感のある役が多かったけれど、実生活では1994年に元妻とその友人を殺害したとして逮捕され、映画さながらのカーチェイスが話題となった。

シンプソンは刑事裁判で無罪、しかし民事では妻の友人へ犯行が認定された。

さらにシンプソンは2007年に強盗事件を起こして懲役33年、いまも塀の中だ。

出演当時もその後も話題が尽きない役者陣。

スターをたくさんそろえた本作品は、鉄道の描写も見どころたっぷり。

ただし、世界の鉄道ファンから考証のツメの甘さを指摘されている。

ジュネーブ駅のロケ地は実際にはバーゼルSBB駅。

カサンドラ鉄橋はポーランドではなく、南フランスのガラビ鉄橋でロケが行われた。

ガラビ鉄橋は現役とのことで、劇中で30年も使われていない鉄橋と言われるのに、レールの上面が錆びていない。