神の粒子 〜ヒッグス粒子とは?〜




先日、『ヒッグス粒子と見られる新たな粒子が発見された』 というニュースが世界中を駆け巡りました。



…と言われても、「ヒッグス粒子」をよく知らない方がほとんどだと思いますが、「電子」や「ニュートリノ」という単語は耳にしたことがあるでしょうか。



これらはすべて素粒子の一種ですが、その正体を詳しく理解している方は少ないと思います。



そこで、今回は素粒子の正体に少し迫ってみましょう。





■ 水を極限まで分解してみると…



この世にあるすべての物質は「分子」や、それらを構成する「原子」がもとになっています。



例えば、水の化学式が「H2O」であることはよく知られていますね。



このことから、水の分子は2つの水素原子と1つの酸素原子から構成されていることが分かります。



そして、この原子は「原子核」とその周りを回る「電子」から構成されています。

このとき、原子核はプラスの電気を持ち、電子はマイナスの電気を持っているため、お互いは電気的な力によって引き合っています。



次に、原子核は「陽子」や「中性子」からできています。

中性子は電気的な力(=電荷)を持っていませんが、陽子がプラスの電気を持っているため、全体として原子核はプラスの電気を持っていることになります。



陽子や中性子をさらに詳しく見ていくと、それらは「アップクォーク」や「ダウンクォーク」と呼ばれる粒子から構成されていることが分かっています。



このように最小限まで分割された粒子のことを「素粒子」といい、電子やアップクォーク、ダウンクォークらがそれにあたります。



■ 素粒子の種類



素粒子は、全部で17種類あり、それらは大きく「フェルミ粒子(フェルミオン)」と「ボース粒子(ボソン)」の2種類に分けられます。



このうち、フェルミ粒子は物質を構成している素粒子で、ボース粒子はそれらの物質の間に力を伝えたり、質量を与えたりする素粒子です。



先ほど登場した電子やアップクォーク、ダウンクォークらは、すべてフェルミ粒子にあたり、有名なニュートリノもこちらに属します。



そして、これらフェルミ粒子の間で働いているのがボース粒子で、力を与える粒子としては、電磁気力を伝える「光子(フォトン)」や、重力を与える「重力子」などがあり、また質量を与える粒子として、最初に登場した「ヒッグス粒子」があります。



■ ヒッグス粒子の発見



ヒッグス粒子は、1964年にイギリスのピーター・ヒッグスによってその存在を提唱されていましたが、つい先日まで発見されていないことから未知の粒子だと言われてきました。



しかし、先日ついにヒッグス粒子と見られる新たな粒子が発見された、とスイスにある世界的な素粒子研究所「欧州原子核研究機構(CERN)」から発表されました。



そうは言っても、この発見がどれほどすごいことなのか、いまいちピンときませんね。



実は、このヒッグス粒子は宇宙誕生の直後に、すべての物質に質量を与えたとされていることから、「神の粒子」とも呼ばれています。



というのも、宇宙は「ビッグバン」と呼ばれる大爆発から始まったとされていますが、このビッグバンの瞬間、すべての粒子はまだ質量を持っておらず、宇宙空間を光速で自由に飛びまわっていました。



しかし、そのわずか100億分の1秒後には、ヒッグス粒子が宇宙空間を埋め尽くし、自由に飛び回る粒子に水飴のようにまとわりつくことで、質量を与えて動きにくくさせたと考えられています。



つまり、ヒッグス粒子が存在したことで、素粒子はお互いに引き合って結びつき、原子や分子、そしていろいろな物質・生命が誕生できたというわけです。



そのため、この新たに発見された粒子が本当にヒッグス粒子だとしたら、宇宙がどのように生まれ、生命がどのように誕生したのかといった、すべての根源をたどるための大きなヒントになると期待されています。



■ まとめ



素粒子に関する発見の中でも、大きな出来事となった「ヒッグス粒子」発見のニュース。

もし、今回発見された粒子が本当にヒッグス粒子だとしたら、宇宙誕生の秘密が一気に解明されるかもしれません。



それにしても、巨大な宇宙の誕生を解明するためには、極限まで小さな素粒子の働きを解明しないといけないなんて、何だか不思議な関係ですね。



(文/寺澤光芳)



■著書プロフィール



寺澤光芳。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。