どの世界にも一流の人はいる

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2012年7月18日付の夕刊フジに、「職種別平均年収リスト」が掲載されていた。トップは私立病院の常勤医師の1700万円。1500万円の弁護士(ボス弁=事務所経営)や、1163万円の大阪市議、1035万円の航空機パイロットなども上位となっている。

このほか、「ひな鑑別師」という聞きなれない職業が600万円で19位に入っているところが目を引く。「弁護士(イソ弁=雇われ)」に並ぶ水準であり、会社員全体の平均406万円から見ると結構な高収入といえるだろう。

「目的に応じた飼育」のためにオス・メスを見分ける

このリストの出典は、石渡嶺司・山内太地著『最辛大学ガイド2013』(中央公論新社)。

ひな鑑別師とは、鶏卵から孵化したばかりのヒヨコのオスとメスを見分ける特殊技術者のこと。正式名称は「初生雛(しょせいびな)鑑別師」といい、日本の国家資格にもなっている。

畜産技術協会のホームページによると、ヒヨコはある程度育てば、誰にでもオスかメスかの区別ができるようになるが、それまで待っていては、えさ代や施設が「大変ムダ」になる。「目的に応じた飼育」をするためには、一日も早く鑑別する必要があるという。

具体的に書かれていないが、鶏卵を産むメスと、鶏肉として売るオスとでは、エサのやり方や飼育の方法が大きく異なるようだ。メスのグループにオスが混ざっているのも、その逆も、出荷先に多大な迷惑がかかる。

鑑別の方法には羽毛や体色によるものがあるが、プロの鑑別師は指でヒヨコの肛門を開き、オス・メスの生殖突起を瞬時に確かめる「肛門鑑別法」をマスターしている。

高度な技術であり、鶏の飼育に影響を与える重要な仕事ということは分かる。しかし、最難関の司法試験に合格し、司法修習生として採用され、さらに考課に合格しなければなれない弁護士と同じ年収なのは、やはり意外さが否めない。

400羽のヒヨコを36分以内で鑑別しないと不合格

資格情報を調べてみると、鑑別師になる道は楽ではないようだ。満25歳以下で鑑別師養成所の試験を受けて、2〜5か月の講習を終了すると、ふ化場で1〜2年程度の研修に移る。その後、高等考査に合格する必要がある。

高等考査では、400羽のヒヨコを36分以内に鑑別しなければならない。合格に必要な「鑑別率(正答率)」は、平均99%以上。1羽あたり約5秒で、ほぼ完璧に見分けることが必要だ。プロになれば2秒で見分ける人もいる。

養成所の入所者が、最終的に資格を取得できるのは約半数というから、相当の難関といってよい。養成所の受講料にも100万円以上かかる。

人には向き不向き、得意不得意がある。机にかじりついて司法試験に合格することはできても、鑑別師の修業に耐えられない人もいるだろう。同じ「年収600万円」でも、いろいろな道があるものだ。