第147回芥川・直木賞の選考会が17日に行われ、鹿島田真希さん(35)の『冥土めぐり』が芥川賞、辻村深月さん(32)の『鍵のない夢を見る』が直木賞を受賞しました。鹿島田さんは4度目、また、辻村さんは3度目の候補で、見事受賞となりました。

 ともに30代にもかかわらず、既に複数回の候補経験がありました。彼女たちのような、若く力のある女性作家が、今後の出版界をリードしていくのではと期待が膨らんでいます。

 そんな明るいニュースとは対照的に、「文学って何の役に立つのか」と、独自の考えをもつ芥川賞候補作作家がいます。

 2006年に中編『点滅......』が、第135回芥川賞候補に選出された中原昌也氏です。三島由紀夫賞をはじめ、野間文芸新人賞、ドゥマゴ文学賞など、様々な受賞経験がある中原氏は、自伝となる書籍『死んでも何も残さない』のなかで、90年代後半は、いわれるがまま書いて、何か忙しいといった日々だったと振り返っています。文学賞を受賞したことは、「全部、茶番」だと言い放ち、「小説は、本気でやりたくなかった」「そもそも小説というのは何の役に立っているのか、つい考えてしまう」とのこと。

 中原氏が文学者にいくら小説が嫌いだと話しても、誰も理解してくれなかったようで、文学関連の人は苦手になったそうです。ついていけないというか、人種がまったく相容れないのです。

 「書くといっても、元ネタがどこかにあって、ぱくっているから文章になるわけで、元がなければ何もできない。覚えていないけど、頭の中で、無責任に切り張りしているだけである。だから、自分の中では、文章表現に対して、そんな大層なもんじゃねえ、と思っているだけなのに、付随しているものが、もっと下らないと思うことばかり。たとえば、権威。たいしたことないのに偉そうにしている作家。もちろん、作家がそういう人ばかりではないけれど、うすら寒い光景が広がっている」

 作家から見える景色とは、こういったものなのでしょうか。貴重な意見が、同書のなかで紹介されています。

 現在は、執筆活動を最小限におさえ、音楽活動や美術活動が中心となっている中原氏。

 同書の帯にある町田康氏のコメント、『本当のことはつまらない。でも本当に本当のことはおもしろい』の言葉が印象的な一冊です。



『死んでも何も残さない―中原昌也自伝』
 著者:中原 昌也
 出版社:新潮社
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