物心ついた時から、この人は女性週刊誌を賑わせる人だった。母などは美容室の待合室で、デヴィさんが今度はこんなことをした、あんなことをした、という話題を楽しんでいた。スカルノ大統領が亡くなって40年以上になるが、デヴィさんはずっとこんな調子で生きてきた。

スカルノ大統領は赤い大統領だった。共産主義者ではなかったが、常に共産圏の支持を取り付けていた。同時に、家はヒンズー教だったがイスラム教徒になり、さらに民族自決主義者だった。

そうなることで、中国やソ連などの国の支援を得、インドネシアに増えつつあったイスラム教徒の支持を取り付け、さらに国家として独立を目指した。

極めて政治的な人間だったのだろう。マキャベリストといっては酷だろうか。デヴィさんは東京でホステスをしているときに見初められて愛人となり、さらにイスラムの習慣にのっとって一夫多妻のスカルノ家の第3夫人となった。1962年、デヴィさん22歳の事だ。スカルノはデヴィさんを愛していたとは思うが、同時に彼女と結婚することで、日本からの支援を取り付けたいという思いもあったのだろう。

デヴィさんは日本政府の高官と渡り合って、インドネシアへのODAなどを決定するうえで貢献したという。

しかし大統領夫人だったのはわずか3年に過ぎない。65年にはスカルノは失脚、軟禁される。デヴィさんはパリに亡命したのち、自由奔放な生活を始めたのだ。フランスの貴族や日本の映画スター(本郷功次郎とか津川雅彦とか)とのロマンスが、美容室で読むような雑誌にごてごてと載っていたのだ。

70年にスカルノが死ぬと、莫大な遺産を相続したようだ。以後は、国際的な上流階級の女性として、日本国内では変わったことをいうおばさんとして、生きてきた。万博の年からずっとそんなだったのだ。

女性誌などは、ネタが尽きるとデヴィさんのところへ行って、派手なお宅を紹介したり、上流階級の話(ほら話みたいな)をお伺いしたりする。結構視聴率が稼げるのだ。でも、恐らく世間の人々は、デヴィさんをセレブというよりは、パンダか何かのような珍獣扱いをしてきたと思う。

どうやってそんな贅沢な生活を40年もすることが出来たのかは知らないが、デヴィ夫人は今も元気だ。そして、凄く変わった言動を繰り返している。

北朝鮮で権力者が代わった時には、招待を受けてお祝いに行っている。これは夫スカルノが共産圏との交流が深かったことに因んでいるのかもしれない。日本中が北朝鮮バッシングをする中「拉致被害者を北朝鮮に戻すべきです」という超ド級の発言もしている。

ブログが出来てからは、その発言にターボがかかった。

昨年11月には『皇太子位を秋篠宮文仁殿下へ移譲』の署名運動を開始している。皇太子は退位したうえで、雅子妃とは離婚すべきだそうだ。怖いものなしである。

今、話題の大津市のいじめ事件では、恐らく有名人でただ一人、加害者やその家族の実名をブログに上げ、攻撃している。ただ、その中で別人が混ざっていたことに気が付くと、率直に謝っている。悪気はないのだ。

昨日、「明日 重大な 報告を致します」と予告した。

果たして、それはただの「メルマガ始めます」の告知だった。

その後は、大津市いじめ事件に戻って、今回は被害者の実名を明らかにしている。

彼女なりに、非常に熱心に被害者の支援をしているのだが、実名をさらされては被害者の親もたまらないところだろう。

一部の激しいバッシングを受けながらも、デヴィ夫人は生きながらえている。オピニオンリーダーを自認する彼女は、世間とは大きくずれた感性と理性で、言いたいことを言い放っている。

マスコミや世間が、きわどい発言ばかりをする彼女を潰さない理由はただ一点、「その方が面白い」からだと思う。

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