目先の営業成績を上げるためなら、社内の他部署の足を引っ張ることもいとわない会社と、全社的に協力しあうのが当たり前の会社。後者の方がいいに決まっているのに、現実に回りを見渡せば前者のような会社も多いのではないでしょうか。
 “全体最適と部分最適”と呼ばれる難しそうなテーマを、軽快でコミカルな小説風に書いてのけたのが『オアシスはどこにある?―渇きを癒す組織論』(楽田康二/著、育鵬社/刊)の著者・楽田康二さん。組織が抱える問題を読み解く鍵や解決のヒントについて、お話をうかがいました。今回はその後編となります。(新刊JP編集部)


■「全体最適視点」が、悩むあなたと問題だらけの会社を救う!

―『オアシスはどこにある?』にはキャッツ電気とワンワン食品という対照的な会社が出てきます。これは具体的なモデルがあったんでしょうか?

「特定のモデルはありません。話をわかりやすくするため極端な例として創造しました。キャッツ電気では、部分最適視点の人しかいない会社がどういう状態に陥るかを描き、ワンワン食品では、部分最適と全体最適両方の視点をバランスよく持つ会社の例として描きました。もっとも、いろいろな業界の知り合いの会長さんや社長さんから「キャッツ電気ってうちのことだろう! モデル料を貰わないと」なんて言われました」

―自分の会社の話を書いたと思われちゃったんですね。

「あくまでも冗談ですけどね(笑)。誰でも思い当たるところがある話になっているということは狙い通りです。繰り返しになりますが、経営者でも、管理職でも、中堅社員でも、新入社員でさえも「うちの会社と同じだ!」思い当たるところがあるはずです。そしてその解決策のヒントも示しています」

―まだ読んでいない読者の方のために本書のテーマ“全体最適と部分最適”についてちょっとだけ説明してください。

「本書の第一章で、ある会社での営業本部と商品本部の対立が描かれていますが、これは多くのメーカーに共通して見られるエピソードです。営業本部も商品本部もそれぞれの部門としてのベストを尽くし、個別に見ればいい仕事をしています。これが部分最適です。会社全体がうまくまわっている時にはこれだけで問題なく進みます。ところが景気が悪くなったり、業績が悪化したりすると、各部門が上手に調整したり協力しなければ乗り切れない局面が出てきます。全体最適視点がない会社では、この調整がうまくできず、各部門が衝突したり対立したりすることがあります。それぞれ自分の部門としてはベストを尽くしているつもりなので、なぜ問題が起こるのかわからなくて困ってしまうわけです」

―確かに、キャッツ電気みたいに、同じ会社の中なのに足を引っ張り合ったり、敵視したりするようなことってありますよね。同期のライバルが相手を蹴落とそうとするのも同じ問題ですか?

「はい、その通りです。それは個人ごとの部分最適しか評価しない会社に見られますね。個人の成績だけで出世が決まるなら、自分以外を蹴落とそうとするのは自然と言えば自然です。もしも、ライバル同士協力して全体の業績を押し上げることを評価する会社なら蹴落とし合いにはならないはずです」

―それがワンワン食品ですね。

「そうです。このような対立の構図は、組織のいたるところに見られます。本書では、会社組織のさまざまな場面で見られる問題とその解決法について一章ごとに丁寧に解説しています。いったん“全体最適と部分最適”という視点を身につけたら「なんだ、そういうことだったのか!」と思い当たることがたくさんあるはずです」

―本書にも書いてありますが、サークルでも家族でも身近な例で思い当たります。

「面白い感想としては、ミュージシャンの方からのご感想で、バンドでも当てはまるという話がありました。複数録音した音源の中から曲のためにベストなものを選んでも「なぜこっちのテイクを使わないんだ。こっちの方がいい演奏なのに」なんて文句を言われたりするんだそうです(笑)」

―確かにそれも“全体最適と部分最適”の話ですね。他にはどんな感想が届いていますか?

「絵描きの知人も、作品の全体像を捉えることと細部の描き込みに関して考えたことを書いてくれました。どうやら作者が意図した以上に幅広い読み方ができるようです。書いた立場としても新しい発見があります。他にも、飲食店を経営されている方や、住職さんからも感想をいただきましたが、組織について日ごろから思うことがある方なら、どなたでも思い当たるところがあるようで、これは作家冥利に尽きます」

―一般的なビジネス書の枠には収まらない内容ということでしょうか。

「もちろん会社にお勤めの方からの感想もたくさんいただいています。コンサルタントの知人には出版前に内容に間違いや誤解を招くところがないかチェックしてもらって御墨付きを貰いましたし、話が面白くてスイスイ読めるのがいいと言ってもらえました。何度も書き直しを重ねて一緒に練り上げた思い入れがある話なので、ストーリーを素直に楽しんでもらえると嬉しいですね」

―最後にこのインタビューを読んでいる読者の方に一言メッセージをお願いします。

「経営者の方も、会社にお勤めの方も、「頑張っているのにどうしてうまくいかないのかな、どうして問題が起こるのかな」と思う場面があると思います。それはひょっとすると、全体が見えなくなっていたり、長期的な見通しができなくなっていたりする部分最適思考に陥っているせいかもしれません。『オアシスはどこにある?』では、ややこしい理屈は一切言わずに、“全体最適と部分最適”についてわかりやすくまとめました。一晩もあれば読める面白いストーリーを楽しみながら、ぜひ全体最適視点を身につけてください」

(了)