家電量販店における『ボーナス商戦』という言葉も、今後は死語になるかもしれない。
 公正取引委員会は今年の2月16日付で、業界2位(当時)のエディオンに対し、独占禁止法違反に該当するとして排除措置命令及び課徴金約40億円の納付命令を行った。これらを不服としたエディオンは、3月7日付けで審判請求を行い、現在、公正取引委員会審判廷にて審判が行われている。
 一般消費者にとっては縁遠く無関係な話に聞こえるが、審判結果によっては、家電量販店は格安の店ではなくなる可能性を秘めているのだ。

 エディオンは、『イシマル』(関東地方)、『エイデン』(中部地方)、『ミドリ』(近畿地方)など地域別にブランド名を使いわけ、全国約1180店舗を展開する家電量販店チェーン。2012年3月期の連結売上は7590億円である。
 公取委から違反と指摘されているのは、メーカー等の取引業者から従業員(店舗販売員)を無償で派遣させた行為。これは、平成20年6月にヤマダ電機が指摘されたのと同じだ。ただし、「今回は公取委の本気度が違う」と取引業者は言う。ヤマダの際、取引業者にヒアリングして回った担当は役職者ではなかったが、エディオンの取引先には審議官が対応するなど、最初から審判を見越した対応をしているからだ。
 「エディオン側の主張が退けられると、メーカーからの無料人材派遣やリベートといった“家電量販店ビジネスモデル”が、根底から崩れる事態になりかねません。消費者が家電を安く買えるのは、メーカーよりも家電量販店の力が強く、無料で販売員を派遣させ人件費を浮かせたり、量販店が値引いた分をメーカーが補填したりしているからなのです。これがなくなれば、家電量販店は費用の増加を余儀なくされ、メーカー希望小売価格で販売する量販店が続出するといわれています。まさに、テレビ1インチ=1万円時代に戻ってしまうことさえ想定されるのです。業界全体が青ざめているのも無理ありません」(経済記者)

 そうなれば当然、ビックカメラがコジマを子会社化したように“規模の論理”で業界再編が加速する。しかし消費者にとっては、これも決していい話ではない。
 たとえばビック=コジマは、収益性の改善策として全国にある店舗のうち40〜50店舗を閉鎖する予定。関係者は「収益性を考えるなら最終的に100店舗近く閉鎖が必要」と見ており、消費者にとっては、なじみの店がなくなる上にポイントカードも使えなくなる。もちろん購入した家電のメンテナンスにも支障が出ることになるのだ。

 家電を安く買えるのは、今年の夏が“最後”なんてことがあるのか−−。
 夏のボーナスを争奪するため各店の販売員が、たくましき全国の風俗嬢のように、何か特別変わった“アプローチ”で商品を薦めてきたら、業界全体に異変が起きているということなのかもしれない。