「なおざり」と「おざなり」、どちらを使えばいいの?




見た目も発音も似ている言葉(漢字)は、意外に多いものですよね。しかし、これらの言葉のそれぞれの意味を正しく理解し、正確に使いわけている人となると、少ないのではないでしょうか。そこで、人気テレビ番組「世界一受けたい授業」に言葉の専門家として出演された、名古屋市立大学特任教授・守誠(もり まこと)先生に解説していただきました。



「なおざり」と「おざなり」



「『なおざり』と『おざなり』は、今回のテーマの典型的なひとつといえるでしょう。しかし、この2つの言葉には大きな意味の違いがあります。なんとなく同じ言葉ととらえてしまうのは、ひらがな表記、発音が似ているためです」(守教授)



「なおざり」は漢字で「等閑」と書き、「いい加減で、注意を払わないさま」が一般的な解釈とのこと。加えて、「あっさりしている」という意味もあるそうですが、あまりメジャーではなく、先生もこちらの意味では一度も使ったことがないそうです。



一方、「おざなり」は漢字を入れて書くと「お座なり」となり、「いい加減に物事を処理する『こと』。またはその『さま』」という意味。



あらためて2つの意味を見比べ、その違いを検証してみました。



正直、どちらも「いい加減」を意味する言葉であることはわかりましたが、微妙な違いとなるとよくわからない……。さらに解説していただきました。



「『おざなり』の解釈の頭に『当座しのぎ』をつけてみましょう。すると、2つの言葉の違いに気づきませんか?」



「当座しのぎ」とは、その場だけを間に合わせる、一時しのぎという意味です。つまり、「おざなり」とは、その場しのぎでいい加減に物事を処理する様子をあらわします。



「おざなり」はいい加減ではあるけれど、一時しのぎで何かをする。しかし、「なおざり」は何もしないで放っておくだけ。



つまり、おざなりな状態が続くと、なおざりになるというわけですね。くれぐれも皆さんは、なおざりにならないようにしましょう。



「一所懸命」と「一生懸命」



「パソコンや電子辞書がいまのように普及されておらず、手書きが主流であった時代、私は特に違いを意識せず、その都度、感覚的に使いわけていました。しかし、手書きした原稿が手元に残っておらず、どちらを主に使ったかはっきり覚えていません。そこであらためて、ふだん使う小学館の国語辞典で調べてみました」



辞典によると、「いっしょうけんめい(一生懸命)」は、「非常に熱心に物ごとをするようす」。「志望校を目ざし一生懸命勉強する」といった使い方をします。



なお、「一生懸命」の生まれた背景は、「1か所の領地を命がけで守る意味の<一所懸命>から出た言葉」とのこと。



「一生懸命」も「一所懸命」も正しく、どちらも同じ意味で使われているということがわかりました。ただそこには、感覚的な使いわけがあってもアリだということも。



ちなみに「今日では『一生懸命』の方が一般的です」との解説をいただきました。



「了解」と「了承」



「『了解』は深く理解して認めること。一方『了承』は、了解に比べれば軽く理解してよしとすること」



つまり、その理解度で「了承<了解」ということがわかりました。



しかし、この2つの言葉は部下が上司に使う言葉ではないため、決して安易に使ってはならないとのこと。皆さん、大丈夫ですか? 「やばっ、使っている」なんて方は、いますぐやめてくださいね。大手商社マンで、バリバリ活躍されていたキャリアも持つ先生がおっしゃるのですから、意味うんぬん以前にビジネスマナーとしても重要な言葉というわけです。



では、部下は上司にどのような言葉を「了解・了承」の代わりとすればよいのでしょうか?



答えは「承知しました」です。意外と一般的だとも思いますが、了承は了解に比べ、なんとなく上品な言葉にとらえてしまいがちですから、注意が必要ですね。



守 誠(もり まこと)



1933年生まれ。横浜市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、商社マンとしてモスクワ駐在をはじめとし、世界48カ国を訪問。30年以上に渡り活躍する。国際労働機関(ILO)常設諮問委員会の日本代表を務めた経験も持つ。愛知学院大学教授を経て、現在は名古屋市立大学で特任教授を務める。経営、人生論、英語、言葉に関する著者多数。代表作は『特許の文明史』(新潮選書)、『ユダヤ人とダイヤモンド』(幻冬舎)、『英会話・やっぱり・単語』(講談社文庫)など。『読めますか?小学校で習った漢字』(サンリオ)は47万部のベストセラー。80歳近い年齢の今でも世界各地を飛び回り、精力的に活躍している。



(OFFICE-SANGA 杉山忠義)