医師の要望を聞き、患者さんのためになるCT検査を指導

ビジネスパーソン研究FILE Vol.176

GE ジャパン 内田美帆さん

GE ヘルスケア・ジャパンで病院に納品されたCTのサポート業務を担当。内田さんのやりがいとは?


■小規模クリニックで経験を積み、2年目には大規模病院で高度CT装置のサポートを経験

大学4年の病院実習で、健康に生きることの大切さを痛感した内田さんは、診療放射線技師の資格を生かして働く自分の将来を、病院ではなく企業に見出した。
「病院で目の前の患者さんを助けることも非常に大切ですが、企業で働くことで『直接手を差し伸べることができない患者さんにも、自分の仕事が届いたらいいな』と思ったんです」

GEヘルスケア・ジャパンは、トーマス・エジソンを創始者の一人とする米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)のグループ企業。CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴断層撮影装置)、X線、超音波診断装置などの画像診断装置を開発・製造し、営業・サービス、ソリューションの提供をしている。GEは、世界100カ国以上で事業を展開し、海外の製品を日本に導入するだけでなく、日本にも開発・製造拠点を設けて、日本発の製品を世界に送り出している。

内田さんの仕事は、病院に納入されたCTのサポート業務。正式配属となった6月中旬からは、同じ部署の先輩や営業担当と一緒に病院を訪問し、現場経験を積んでいった。CTは高度な精密装置だけに、検査を担当する技師へのトレーニングが不可欠。装置の操作法はもちろん、医師が希望する検査内容を聞いて、それに適した操作法を技師に指導していくことが求められる。
「この業務は、製品知識が豊富であることが大前提。大学では診療放射線技師の資格取得に向けて勉強をしていたので、製品知識はすんなりと頭に入ってきました。ですから、初めての仕事に戸惑うというより、新しいことを吸収できることに、毎日ワクワクしていましたね」

11月からは、小規模なクリニックを中心に1人でサポートするように。全国を担当するので、週3、4日は地方に出張して、月5、6件病院を訪問した。

サポート業務の要領がつかめてきた2年目、内田さんに宮城県にある大病院を担当するチャンスが訪れた。初めてGEのCTを導入する病院だけに、関係者の期待がかかる重要な仕事である。装置設置からトレーニングまで、数カ月間にわたる内田さんのサポートにより、CT検査は順調に行われるようになった。
「大規模病院での高度な装置のサポートは、私にとっては初めての経験。しかも、大学の先輩も勤務している病院に会社の看板を背負って乗り込んでいくのは、かなりのプレッシャーで『絶対に失敗はできない!』と強く思いました。『この装置を入れて良かった』と言ってもらうことが私のゴールでしたが、ドクターに『仙台の中心地まで出かけなくても、この病院で精度の高い検査ができるようになって良かった』と喜んでいただけて、肩の荷が下りました」


■医師や放射線技師の声が反映された日本発の新製品が誕生。1号機のサポートを担当

2011年末には、日本でも数台しか設置されていない最上位装置を、長野県の病院に導入するサポートを経験した。先方担当者は、CT検査による被ばく量を減らしつつ、高画質の画像を得てガンの死亡率を減らすことに尽力している医師。それだけに装置への関心は高く、通常なら設置後はすみやかに検査担当技師のトレーニングに入るのだが、この病院ではトレーニングに入る前の医師への説明に4時間近くを費やした。
「これをクリアできるかどうかで装置の評判が決まるので、私も必死でした。ドクターの表情は終始険しく、厳しい質問が続きましたが、それが終わるとドクターの表情が柔らかくなったんです。撮影した画像を見ながら、『確かに内田さんの言うとおりだね』と言ってもらえて、ようやく私の緊張も解けました。その病院を訪問している別の担当者からも『内田さんのおかげで良い検査ができるようになったと、ドクターが喜んでいたよ』と聞いて、大きな自信になりました」

内田さんの仕事は、患者さんのためになる検査を医師の要望通りに行うために、装置の機能を最大限活用できるようサポートすること。病院がどんな検査を行いたいのか、CTにどんなことを望んでいるのかを把握し、課題を解決していかなければならない。
「あらゆる装置の性能を熟知し、機械でできること、現状での限界をきちんと理解していないと、臨床で求められることやドクターの高度な要求に応える手段は見つかりません。そこがこの仕事の難しさです。私の回答が病院の検査になり、それが患者さんにつながっていくと考えると、気が抜けません。でも、つらいと思ったことはないです。装置を導入した病院は、これからできるようになる検査にとても期待しています。そんな前向きな気持ちを、現場でもらえる仕事だからでしょうね」

そして、「今が一番楽しい!」と内田さんが目を輝かせる理由――それは、販売サポートメンバーとして、開発段階からかかわってきた新製品の1号機が6月に導入となり、そのサポートを任されたからだ。
「2012年1月には北京に出張して、エンジニアと製品の改善要求の打ち合わせを行いました。私たちサポート担当を通じてドクターや技師の声が生かされた最新機器が、日本主導で開発されたことはとてもうれしいですね。しかも、お客さまだけでなく、社内の期待もかかる1号機のサポートを任されたことに、大きなやりがいを感じています」

目下の目標は、その1号機が有効に活用され、評判となること。そしてもう1つは、現在リーダーを務めている社会貢献活動「GEボランティア」が、7月と8月に病院や障害者福祉施設で開催するイベントを成功させること。
「販売サポートメンバーやボランティア活動を通して他部署の人たちとの接点が増え、たくさんのキャリアの方向性があることを知りました。当社は、東日本大震災の前から宮城県と『サステナブルシティ(持続可能な街づくり)』の実現に向けた活動を進めています。出身校の東北大学とも連携している活動なので、その仕事にも興味を持つようになりました。現在は病院単位の問題解決に取り組んでいますが、将来はさらにフィールドを広げて、街単位のソリューションを提供していけたらいいですね」