先日、東京・新宿の美術館で開催されていたある画家の回顧展を見に行きました。日本ではまだあまり有名ではないその画家の作品は、印象派の影響を受けた作風で、素人の眼ではありますが、光の明暗の表現がすばらしいと感じました。特に月明かりに照らされた家の窓から暖かい光があふれているその絵は、中にいる家族のなごやかな団欒風景を想像することができて、とても暖かい気持ちになりました。「癒しの画家」という表現で紹介されていましたが、日頃仕事などでイライラ、バタバタ、キューキューしている私の心に優しく沁みわたり、とても癒されたひとときでした。

辞書を引くと「癒し(癒やし)」とは、肉体の疲れ、精神の悩みなどを何かに頼って解消したり和らげたりすることとあります。昔からある日本語ではあるものの、頻繁にその言葉を聞くようになったのは1990〜2000年代からのようです。やはり時代の流れとともに、仕事や生活に圧迫感や不安感が増してきて、慌ただしい毎日を送るにつけ、安らぎを求めて「癒される」ことを切望する人が多くなったのではないでしょうか。「癒しのサロン」や「癒しのスポット」など、「癒し」をテーマにした施設も増えていますし、近頃はペットに癒しを求める人も多いようです。ネット上にほのぼのとした表情の犬や猫の写真をよく見かけます。
1日の仕事を終えて、ほっと一息つける癒しの空間のひとつは、自宅や自室ではないでしょうか。自分好みのインテリアに囲まれた部屋では、気持ちがリラックスして、心静かに過ごせることと思います。
色彩で「癒しの色」としてはピンクがあげられます。優しくて穏やかな印象が伝わり、ふわっとした雰囲気が気分を和らげてくれるようです。ただし、これは一般論にすぎません。ピンクが嫌いな人にとっては、ピンクを中心としたインテリアに囲まれた部屋は居心地がいいはずがありません。たとえば赤は交感神経に働く作用がありますので、長い間赤を見続けていると疲れてしまうようですが、赤が大好きな人にとっては、赤いもので囲まれた赤の部屋こそが、癒しの空間だと感じるのかもしれません。

自分にとっての癒しの空間は、まさに自分にとって居心地のいい空間です。インテリアやファブリック、小物に至るまで、自分の趣味で選んでこそ、その空間は生まれます。インテリアの重要な要素のひとつが色ですので、色ももちろん好きな色を多用したほうが、その人にとってはふさわしい空間になるのだと思います。そこにひとつ、色彩について、たとえば色の使い方によっては疲れやすくなる、寂しい気分になる、空間を広く見せる効果がある、時間の経過が短く感じるなどのアドバイスができれば、その方により快適な癒しの空間を提供できるのではないかと思います。