岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (16) 増税の論拠は「税収減」ではなかったか? 2011年度税収は”前年度超え”の事実

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財務省は今月に入って、一般会計決算(概要)を発表しました(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2011/ke240702.htm)。

昨年は東日本大震災のため、経済活動の停滞を余儀なくされた状況があります。

電力供給への不安もあり、停電によって工場などの操業はかなり制限もされました。

そして為替市場では対ドルで戦後の最高値を更新し、長らく円高水準に留まっています。

私自身は円高で日本経済全体が疲弊するとは思ってはいませんが、仮に円高によって打撃を受けるのであれば、法人税の税収は大幅なマイナスになるはずです。

円高というよりも震災の悪影響を懸念してのことですが、2011年度は税収の落ち込みを予想していたのです。

しかし、公表を見て唖然としました。

国の税収は42兆8326億円と前年度超えの税収です。

新聞などの報道によれば、扶養控除の見直しで所得税が13兆4761億円で前年度比3.8%増加したとのこと。

国民にとっては負担が増えたことになり、これは素直には喜べないとしても、非製造業の業績回復によって法人税収が9兆3,514億円、前年度比4.3%のプラスとなりました。

その結果、税収が新規国債の発行額を3年ぶりに上回ることとなったのです。

これをポジティブ・サプライズ(予想外の良さ)と言わずして何と言いましょう。

一般会計税収の決算額の推移(出典:財務省)歴史的円高の影響も限定的であったという点のほかに、「増税の論拠は税収減ではなかったのか。

単年度とはいえ例外的な年だったにもかかわらず税収が上がっているのに、増税を求めるのはいかがなものか。

何よりも、小売業が震災後何とか立ち上がってきている現状で、その売上げに水を指すような消費税を導入する必要があるのか。

」―そんな思いに駆られるデータです。

国民が日本国を維持していくための応分の負担をすることは当然ですが、民間の驚異的な回復力によって税収がアップしている、つまり民間がこれほどの努力をしているのに、しかも震災からようやく1年が経過したような時期に消費税の話を始めるのはやはり拙速に過ぎます。

これまでは「税収に対してそれを上回る国債が発行されているのだから、日本の財政は破綻するのだ」と散々言われてきただけに、発行額を超える税収が震災のあった年にあったのだと知れば、皆さんも安堵するのではないでしょうか。

政府の借金が1000兆円という数字に関しては政府の勘定の一部過ぎず、資産の話はされていない、というのは前回お話した通りです。

それでも、資産があっても心配だという人もいるでしょう。

過剰な債務は個人でも企業でもよくないことです。

その一方で適度な債務は、企業活動をする上では必要となってきます。

債務の金額についてはどこまでが許容範囲で、どこまでが過剰なのか、その線引きをするのが難しいのは事実です。

例えば、原発に代わる新しいクリーンエネルギーが開発され、それを広く国民に利用してもらうための装置が必要となったとしましょう。

その装置を大量に生産するために、クリーンエネルギーを開発した会社は工場の建設が急務となります。

借金はないに越したことはありませんが、元手がない場合は銀行や投資家からの借り入れに頼らざるをえません。

日本国中に行き渡るような装置であれば、大規模な工場建設が急務となりますので、負債も相当な金額となるはずです。

企業自体の規模に対して、あるいは年間の売上に対して何倍もの債務を背負ったこの企業は間もなく経営破たんをする会社だと、果たして言えるでしょうか。

会社には工場や土地といった資産もありますし、預金などもあるかもしれません。