「女性だけの職場」は女性リーダーを育てるか?【4】

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ここで、「なぜ女性のリーダー育成が急務なのか」という根本的な命題に立ち返りたい。坂野尚子は「男性の優秀層は大企業に採られてしまうので、我々ベンチャー企業や外資系企業は優秀な女性を雇わないと生き残ってこられなかった」と明かす。裏返して言えば、伝統的な日本の大企業は男性だけで事足りていた。それは国際比較における女性管理職の低さでも明らかだ。

ところが近年、グローバル競争が激化し、外国人を含む人事のダイバーシティの必要性が急に叫ばれるようになった。グローバル経営も担える優秀な人材は常に不足気味だ。少子化による労働力の減少を待たずとも、人口の半分を占める女性を活用できない企業に将来はない。

大久保幸夫は、日本企業で女性の活躍が広がらない要因はマネジメントスキルの低さであるとし、「女性ばかりの職場」をつくることに合理性はないと主張する。

「男性と女性で本質的な仕事能力が違うわけではないので、成長する機会と本人の志向で将来が決まります。組織の中核になる男性が経験する、とりわけ30代で経験するような機会を、女性は同じく与えられているのかが非常に重要なポイントです。その後、中核的な部署での課長を経て部長になり、いずれ役員になる。このストーリーに女性がいないことが本質的な問題なのです。女性比率を高めて形だけ整える施策ではなく、そろそろ本質的な課題に取り組むべきときがきているのではないでしょうか」

中核的な部署とは、経営企画部・財務部・営業本部・研究開発部・主力工場などだ。これらのトップに女性社員を据えている大企業は皆無に等しい。トップを狙えるような課の課長職を務める女性も少ない。また、女性ばかりの職場で働いた経験が、組織の中枢に向かうストーリーの一部になるとは筆者には思えない。

雇用ジャーナリストの海老原嗣生も同調する。「この施策が、男社会を壊してまで女性を引き上げていくのは面倒だから、どこか一カ所に集めるという考えでとられたなら危うい。女性の管理職比率を上げないと世間の目が厳しいから4R+2Rと呼ばれる部署に女性を集めるのと同じ発想です」。

4Rとは、人事(HR)、経理(IR)、広報・宣伝(PR)、そしてカスタマーリレーション(CR)の俗称。これに秘書(Secretary)と受付(Reception)を合わせて6Rと呼ばれる。

一方で、女性が活躍するための「ステップ」となりうるなら評価できると海老原は続ける。

「男性が女性を教える文化はまだ整っていないので、女性の先輩に教えてもらったほうがいい。例えば営業で最後に受注するときにどうするか、お客を怒らせたときにはどうするか……。ホワイトカラーの仕事はマニュアルでは伝えられないことばかりです。だから46時中一緒にいて伝授する形でないと身につかない。そうすると、異性に教えるのは非常に難しくなるのです。連れ回せないし、どつけないから」

女性は女性の中で各業務を覚え、リーダーも経験するほうが効率的だという意見だ。確かに、プレジデントの調査でも、男性管理職の7割が女性には仕事を教えにくいと回答している。

「業務もマネジメントも覚えて出世した女性には、今度は男女比率半々ぐらいの部署を経験させる。さらに、男性が圧倒的多数の場所にも行く。そして、新たな階層に上るときは、女性だけの部署に戻ってまた腕を鍛える。養成所としては女性だけの職場もいいと思います」

最終的に男女混合の職場で働くならば、女性だけの組織をつくることは遠回りではないのか。海老原は、世界有数の女性活用後進国である日本の企業風土でいきなり男性と並べて競争させると、男性と変わらない「スーパーウーマン」がごく少数生まれるだけに終わると反論する。

「スーパーウーマンは『私たちみたいになれない女が悪い。あなたたちも家庭を捨てなさい』と同性差別をしがちです。それでは女性活用の裾野は広がらない。バイタリティがあって後輩指導も上手な肉食ウーマンを増やすには、女性だけの部隊をつくるのもいいと思うのです」

ただし、海老原は女性チームのメンバーは、将来を見越して社内で「横連携」をとるべきだとアドバイスする。それは女性が集められがちな内勤部隊「6R」と共通の課題だという。

「例えば、人事部だけしか経験がない女性。営業現場にコネがないので、新しい制度を設計するときに営業の人に根回しできず、ローテーションで営業を経験して向こうに人脈もある男性総合職に後れをとってしまいます。そういう意味で、女性チームの人もちゃんと横連携をとって、視野を広げておいたほうがいい」

「女性のために用意された部署」に閉じこもらないように、そしてそこでキャリアが終わることのないように気をつけなければいけないのだ。

(文中敬称略)

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リクルートワークス研究所 所長
大久保幸夫
1961年生まれ。一橋大学経済学部卒。99年同研究所を設立。2010年より内閣府参与を兼任。専門は人材マネジメント、労働政策、キャリア論。

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雇用ジャーナリスト
海老原嗣生
1964年生まれ。リクルートグループで20年以上、現場を見てきた雇用のプロ。じっくり物事の本質に迫り、解を出すことを信条にしている。

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ノンストレス 社長
坂野尚子
国際基督教大学卒。フジテレビアナウンサー、NY特派員を経て、コロンビア大学MBA取得。1996年、ザ・クイック(現ノンストレス)設立。

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