価格攻防の勝者は新興国年始ヘッジファンドの売りを買い支えた中国
100ドル超下げた金価格が持ち直してきている。エジプトで火がついた中東・北アフリカの情勢不安によるところも大きいが、数字に如実に表れているのが中国など新興国の"買い"の勢い。亀井幸一郎が最新の金マーケットを斬る。

4月号で「アジア現物買いVSファンドの先物売り」と題して、年始から100ドルを超える下げをもたらしているのは、景気回復期待に乗ったファンドの手じまい売りが要因とした。一方では中国など新興国からの現物の買いが活発化している。そのうえで「アジア現物買いか、ニューヨークでのファンドの先物売りか。この綱引き、結局ファンドのポジション整理の売りが切れると値を戻す展開に移行し、ファンドがあらためて買い参入する事態に至ると見ている」とした。

果たして状況はファンドの手じまい売りが一巡した1月末の安値1307.7ドルで反転することになった。ちなみにCOMEX(ニューヨーク商品取引所)でのファンドの買越量は、重量換算で直近のピークとなった昨年12月7日の723トンから先々週2月1日には470トンまで減っていた。重量換算で250トン強が売られたことになる。これだけの売りにもかかわらずドル建て金価格が1300ドルを割らなかったのは、新興国の需要の強さがあったからで、この点に注目すべきだろう。

実は、タイミングよく2月17日に金の広報機関WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が四半期の需要統計を発表している。結果は驚くべきものだった。中国およびインドの2010年の金需要の伸びが予想をはるかに上回っていたからだ。なかでも注目の中国の金需要は、前年比27%増の579トンと過去最高値を記録した。

中国では一昨年秋から中国工商銀行など4大商業銀行を中心に個人販売網を急ピッチで整備中だ。インフレが顕在化する中で実質金利はマイナスとなっており、個人の間で金投資がブームとなっている。それが数字になって表れ始めているわけだ。筆者は、年始から2月上旬の春節までの中国における買いの規模は、昨年のどの期間をも上回るピッチで拡大したと見ている。実は本原稿は、市場調査で訪れた上海のホテルで書いている。私の目で感じ取ったものは次回に取り上げようと思っている。中国における金地金流通網の整備は、中国人民銀行による外貨準備への金の組み入れ戦略の一環、というメインテーマが見え隠れしていて、目が離せない。

金価格はエジプトに続く、バーレーンやリビアでの反政府抗議行動の高まりの中、国際金融市場にも緊張が走り、1400ドルを回復した。買い余力の増したファンドが、事態の予想外の展開に慌てて再参入してのことである。この先、ユーロ圏でのポルトガル問題、米国の住宅市場の低迷などが続いていることもあり、4月に向けてドル建て金価格は過去最高値を更新するとみられる。

亀井幸一郎(かめい・こういちろう)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社MMIを経て金の国際広報機関WGC入社。現在、市場分析や執筆講演など、幅広く活躍中。