提供:週刊実話

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 −−TBS系で放送された『K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!』のボブ・サップ対曙戦は、あの大晦日で一番注目されたイベントでした。
 谷川「視聴率は最高43%です。だから、曙にはせめて2ラウンドまで頑張ってほしかった(笑)。曙はものすごく自信を持ってたんですよ。あんな自信家は見たことないっていうくらい自信満々だった。それであまり練習しなかった(笑)」

 −−でも、興行的には大成功だったでしょう。
 谷川「そうですね。大晦日は、だいたい5億から8億くらい売り上げてました。ほかの会場でも興行的な赤字はありませんでした。でも、脱税の追徴課税を支払ったり、高騰する選手のギャラを支払うと結果的には資金面で苦しかった。逮捕・収監されていた石井館長が'08年に出所して、その頃からK-1をどこかに売ろうという話になりました。実際に数十億で買いたいという話も当時はあった。でも、なぜかずるずると引っ張って、その間に資金面でどうにもならなくなったんです」

 −−株式会社FEGの最終的な負債は…。
 谷川「30億くらいか、それ以上でしょうね」
 山本「それ、言わないほうがいいんじゃないの(笑)」
 谷川「どのみち公表されることですから(笑)。'03年に曙を引っ張ってきたときは、過去最高の“3試合で1億円以上”っていう契約でしたが、その後はどんどん高い選手が何人も出てきたんです。それで、'10年ぐらいからギャラの未払いが起き始めた。最後の方は、前の試合のギャラが未払いだからって、試合直前になっても選手がホテルから出てこないときもありましたよ。前日になって選手の出場が危うくなるとか、そういうトラブルはしょっちゅうでした」

 −−そういえば、ボブ・サップが試合直前に控え室から帰ってしまったことがありましたね。
 谷川「'06年のホーストの引退試合ですね。試合直前になってギャラを上げろと言ってきたんだったかな。それを僕が断ったら帰ったんです。プロデューサーとしてお金で揉めたのはサップだけだったと思います。初めて会ってからの2年間はなんでも言うこと聞いてたんですけどねぇ。『イエッサー』ってサーが付いてましたから(笑)。でも、お金を稼ぎ始めてから言うことをきかなくなったし、弱くなりましたよね。逆にサップの代役として急遽出場してくれたピーター・アーツには感謝してます。あのときは解説者としてビールを飲んでいたところへ、僕が『ピーター、試合!』とオファーしました(笑)。2つ返事でOKしてくれた男気が素晴らしかった」

 −−サップ以外の選手たちは、それほどお金に執着しなかったんですか?
 谷川「魅力的なリングを用意すれば、選手たちは出てくれますよ。そのいい例が今回の『WARU』です。賞金こそありますが、出場選手はみんなノーギャラ。だからって適当に手を抜くなんてことは絶対にない。むしろプロよりも、がむしゃらにガチです。普段いきがってる不良だからこそ、カッコ悪いマネはできない。お金より大事なものを背負って戦うところが、地下格闘技の醍醐味ですから」
 山本「刺青を入れてる街の不良たちですが、試合になると反則が非常に少ないんです。それは、反則してまで勝ってもカッコよくないという意識があるからでしょう」
 谷川「プロでもそうですが、格闘技の魅力って“幻想”だと思うんですよ。たとえば、どこかの暴走族チームのリーダーと、どこかの街を仕切ってる番長はどっちが強いんだろうっていうね。それぞれのドラマをぶつけることで、試合は格段に盛り上がるんです。プロでも“因縁の対決”とかあるでしょう。そういうドラマチックな要素って、地下格闘技の方も濃いんですよ」

 −−そうなると、今後の谷川さんは地下格闘技をメーンに活動するということですか?
 谷川「というより、プロ格闘技の業界を一度“更地”にリセットしたいですね。メジャーがなくなって、選手たちはどこに目標を置いたらいいのかわからない。10年前のビジネススキームが通用しなくなってるのに、キツキツのままそれを続けてる団体が多すぎます。もちろん、ファンも一から作り直さないといけないでしょう。破産したとはいえ、いつか皆さんに恩返ししなくちゃいけないと僕は考えています。そのためにも現状をリセットして、新しいイベントを立ち上げたいですね」

 −−その構想に、目玉となる選手はいますか?
 谷川「うーん、今度のオリンピックで活躍してくれる選手がいればいいんですが…。あとは朝青龍とか。でも選手云々じゃないんですよね。これからいかに新しいビジネススキームを格闘技界で確立するかが重要なんです。今のままではいずれ立ち行かなくなります。そういう意味では『WARU』みたいな地下格闘技イベントの人気が、いい刺激になるかもしれないですね」

谷川貞治(たにがわ さだはる)
1961年9月27日愛知県名古屋市生まれ。日大法学部卒業後、ベースボールマガジン社に入社。空手専門誌『近代空手』などの編集部を経て、『格闘技通信』の編集長に就任。'96年に退社し、CS格闘技専門チャンネルの立ち上げに参加。'03〜'12年までK-1プロデューサーを務めた。

山本ほうゆう
世界空手道連盟真樹道場海外部部長。映像プロデューサー。これまで手がけた作品は700本を超える。『WARU』の代表を務める。

★『WARU 下剋上』ワル日本一決定トーナメント大会スケジュール
・7月7日(土) ディファ有明
・7月15日(日) 後楽園ホール
・9月8日(土) ディファ有明
・10月7日(日)※予定 さいたまスーパーアリーナ コミュニティアリーナ