乙武&双雲流“悩みやコンプレックスから抜け出す方法”

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 ポジティブな考え方を身につけることができれば、毎日は楽しくなるはず。そう思いつつ、なかなか考え方を変えることは難しい。しかし、ある言葉を使うことで、自分のコンプレックスやネガティブな考え方が徐々に前向きになるという。
 それが「だからこそできること」だ。「背が低い、だからこそできること」「神経質、だからこそできること」といった具合に、自分のネガティブな部分を前向きに変えてくれるのだ。

 『五体不満足』で一躍脚光を集め、現在はスポーツライターや教員など幅広い活動を行う乙武洋匡さんと、斬新な創作活動で注目を浴びる書道家・武田双雲さんの対談をまとめた『だからこそできること』(主婦の友社/刊)は、教育談義を起点に、個性、人生など幅広いトピックについて話し合う一冊だが、その中のキーワードがタイトルにもなっている「だからこそできること」だ。

 この記事の筆者・金井の悩みはヒゲの濃さだ。朝、きれいに剃ったのに、夕方になる頃には顔の下半分が黒くなってしまう。そんなコンプレックスを抱くなかで、7月2日の出版記念公開対談イベントの前に、“最強にポジティブな生き方”を実践するお二人にお話をうかがうチャンスを得た。
 どんな言葉を二人からもらえるか楽しみだったが、話は最初から意外な方向に…?

■「この本のテーマは教育ですけれど」「そうなんですか?」

―『だからこそできること』は、「教育」というテーマの元に対談が始まりますが…。

双雲「そうでしたっけ?」
乙武「そうでしたっけ?じゃないですよ(笑)。最初、双雲さんがツイッターで対談を申し込んできたときは、『教育談義』だったでしょ?」
双雲「そうだ!すいません」
乙武「すごいところからボール放ってきますよね」

―私、この本を読んでいて、テーマが「教育」だとずっと思っていました(笑)

乙武「大丈夫です!合っています!金井さん、OKですよ!」

―すいません(笑)本当にミスリードしたかなと思いました。

乙武「『俺、一問目からしくじった!』みたいな(笑)。しくったのは著者です(笑)」
双雲「著者がしくじった(笑)」

―さて、気を取り直しまして、お二人ともお子様を持つ立場として、教育について思うところがあるのではないかと思いますが、今の日本の教育について率直にどうお考えですか?

双雲「極端な話になるけど、一番面白いものを一番つまらなく出している場所だと思っちゃいますよね。もちろん、学校の先生は一生懸命やっているし、誰も悪くはないんです。ただ、仕組みそのものが今の時代に合わないのではないか、と。国語算数理科社会という最高に面白いものを、一番モチベーションを下げるやり方で出している感じがしています」

―乙武さんは、実際に杉並区立杉並第四小学校で3年間、教員をされていらっしゃいました。だからこそ感じる部分は多いかと思いますが。

乙武「そうですね。一人ひとりの先生はすごく頑張っていらっしゃいますし、新しい試みがしたいという意志もあるのですが、学校という組織自体が、クレームや批判をすごく恐れて硬直化してしまっている側面はあると思います。だから、保護者と教師、家庭と学校が信頼関係を一度築き直していくことで、先生はいろいろなチャレンジができるようになるし、その結果やはり子どもがいろいろな経験ができるようになると思うんですよね。保守的にならざるを得ない環境なんですけど、それは決して子どもが幸せになれる環境ではないんですよね。そこは現場で強く感じました」

―では、本書での対談を通して、お互いの印象は変わりましたか?

双雲「自分も前向きな人間だと思っていましたが、こんなに前向きな人っているんだと思いました。こんなに強くてしなやかな人がいるのかって、衝撃的でしたよ。自分もポジティブだと言われていましたけど、まったく違うタイプのポジティブさですね。爽快さを感じます(笑)。僕自身、ここ1年間で体調が悪かった時期があって、気がふさいでいた頃もあったのですが、すごく参考になりました」
乙武「前書きにも書かせていただいたんですが、自分もわりと初対面は得意で、人との間に垣根をつくらないほうだと思っていたのですが、双雲さんはそれ以上に垣根をこえてきたんで、すごく衝撃的でした(笑)」

―きっかけとなったツイッターも、お会いしたことがない状況で双雲さんが乙武さんに声をかけたんですよね。

乙武「そうです。お互いフォローはし合っていたのですが、双雲さんの『教育について対談しませんか』という呼びかけから、頻繁にやりとりをするようになりました」
双雲「実は、なぜ乙武さんかという理由もないんですよね。直感でした。でも、ちょうど同じ世代で、考え方にも共通するところがいっぱいありました」

■自分のコンプレックスも「だからこそできること」で考える

―本書を読んでいて、素敵なお二方だと思いました。

双雲・乙武「ありがとうございます」
双雲「読んでいる間は、緊張してヒゲが急に伸びることはありませんでしたか?」(インタビュー開始前にヒゲの話をしていた)
乙武「(笑)」

―むしろ、リラックスして読んでいたのでヒゲが引っ込んだのではないかと(笑)

双雲「ヒゲが伸びたり引っ込んだり(笑)そうだったら面白いキャラだな(笑)」

―でも、本当に困っているんですよ、ヒゲの濃さ。夜に剃って、朝も剃りますから。

乙武「マジっすか!2回剃るんだ」
双雲「じゃあ、胸毛は生えているんですか?」

―ほとんど生えていないですね。

乙武「髪の毛はすごく多いですよね。だから首から上が…」

―今は前髪が長いので、前髪を全部垂らすと顔中真っ黒になりますね。

乙武「(笑)」
双雲「では、この悩みを僕らがポジティブにとらえましょうか」

―『だからこそできること』ですね。

双雲「ヒゲがすぐに伸びる、だからこそできること」

―実は本を読みながら、考えてみたんですよ。

双雲「考えた!そして!」

―髪の毛を前に垂らして、顔を真っ黒にして、黒装束を着れば黒子ができるかな、と。

乙武・双雲「(笑)」
双雲「そりゃできるけど、黒子になる機会はあまりないでしょう(笑)」

―今日のようなイベントのときは活躍できますよ。

双雲「それ、逆に目立つから(笑)」
乙武「金井さんは好かれるキャラですね(笑)」
双雲「でも、どんどんさらけ出すといいんですよね。『僕、ヒゲが伸びやすいんです』って言ってどんどん自分を出せば、こういう風に笑い話になる。あとは、例えば合コンなんかで、『僕、きれいな人を見るとヒゲが伸びちゃうんですよ』って言ってみるとか」
乙武「それは面白い!」
双雲「で、今日はこんなに伸びちゃいました!みたいな(笑)」

―そのポジティブさにすごく勇気づけられます(笑)。では、最後の質問ですが、本書のお二方の言葉を通じて、軸がぶれない強さを感じました。普段から自分の軸をぶらさないために心がけているところがありましたら教えていただけますか?

双雲「乙武さんはありますか?」
乙武「僕は何も意識していないですね」
双雲「つまり、強さを求めていないってことですよね。強くなりたいと思っていない」
乙武「20歳の頃までは強くなりたいと思っていましたよ。でもそれは、大学生のときに諦めました。無理だな、って。無理ならもう自分は弱いと認めて、人とつながって、人に助けられながら甘えて生きていこうと思ったんです。そうしたら、すごく楽になりましたね」
双雲「なんだろう。委ねることができたというか、全部頑張ろうと思わずに済んだ」
乙武「解放された気がしましたね」

―では、そろそろイベントが開始します。今日はありがとうございました!

 ◇    ◇    ◇

 結果的に、お二人に自分の悩みを相談し、カウンセリングをしてもらった形となってしまったインタビューだったが、自分のコンプレックスを受け入れて、悩みを笑い飛ばす双雲さんと乙武さんの姿に多くを学ぶことができた。
 イベント内でも筆者の(ヒゲの)ことをいじってもらったが、その話で盛り上がる会場を見ていて、ヒゲが濃く、伸びが早くて良かったという想いが生まれた。

 もし、自分にコンプレックスや悩みがあったら、その悩みの後に「だからこそできること」という言葉を付け加えてみてほしい。そのコンプレックスは、自分だけの武器に変わるかもしれないのだから。
(新刊JP編集部/金井元貴)