「女性だけの職場」は女性リーダーを育てるか?【1】

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セブン&アイ・ホールディングスが12年4月から正社員すべてを女性にした店舗を各業態で一つずつ設置したと聞き、現場に急行した。筆者は新卒入社の小売業で女性ばかりのチームに配属され、男性リーダーとして苦労した経験があったため、気になったのである。当時は毎日のように「大宮さんは、かわいいレジ担当の子をひいきしています」などと文句を言われ、女性だけの組織をまとめることの難しさを思い知らされた。今回はそのときよりももっと規模の大きい話だ。

まずは百貨店業態の西武所沢店(埼玉県所沢市)。正社員が100人いる店舗で、これまでは男性が約6割を占めていたが、その全員を異動させ新たに女性社員が加わった。

「女性ばかりの店舗? それは西武(百貨店の)社員の話。我々テナントの者には関係ありません!」

朝一番で地下食品売り場に入ると商品の陳列を行っている若い男性スタッフを見かけた。どういうことなのか。話しかけると、なぜか憮然とした表情でこんな言葉を残して足早に立ち去ってしまった。

別のコーナーではごつい体をしている初老の男性が大きなダンボールを抱えている。懲りずに声をかけると、意味深な笑顔で対応してくれた。

「お兄さん、本当に買い物かい? 若い女の子ならファッション売り場に行かなくちゃ(笑)。私はアルバイトだよ。食品売り場には私たち男の力が必要なの」

エレベーターで5階に上がり、紳士服売り場へ。テナントの各ショップにはやはり男性スタッフがいる。「女性ばかりの百貨店」を強調したテレビ報道がきっかけで来店した客に「なぜ男がいるのか」とよく問われると苦笑する。ただし、西武の正社員が女性だけになったのは事実だ。それによって店舗が少しずつ変わっていると、この男性スタッフは言う。

「ディスプレーでは女性視点を出してきているかな、とは思います。売り上げは今のところ変わっていません。たまたまかもしれませんが、他の売り場では万引が増えたらしいです。女性ばかりだとなめる輩がいるのかな」

そのせいか、「警備」の腕章をした黒っぽいスーツ姿の中年男性をよく見かけた。西武百貨店の社員なのかと聞くと、「私は本部から来ています。この店の社員は全員女性です」と返答。万引防止のためか、存在をアピールするように店内を巡回している。

スーパー業態はどうか。イトーヨーカドー高砂店(東京都葛飾区)を訪れると、通常のスーパーよりも明るく清潔で、スタッフの表情も生き生きしている。ただし、食品売り場にはやはり男性の姿。パート社員だという。

「鮮魚売り場には今も男性の正社員がいますよ。募集したけれど、やりたいと言う女性(の正社員)が集まらなかったみたいです。マネジャーは女性ですが、前職の男性マネジャーがまだいて、マグロの解体法を指導しています」

現在はまだ移行期間中なのだろう。とはいえ、店舗の清掃が行き届いているのは早くも「女性効果」が出たのだろうか。

「クリンネスは以前からみんなでがんばっていますよ。4月からより強く言われるようになりましたけど。キレイになったのは、(商品陳列用の)什器を入れ替えたからでしょう。モデル店になったので予算がついたのだと思います」

この大掛かりな取り組み、そもそも誰がどんな狙いで発案したのだろうか。

セブン&アイの広報シニアオフィサーである松本稔は、経営層によるトップダウン施策で、「環境変化」への対応策の一つだと説明する。

「コンビニ業態のセブン−イレブンですら、女性客が増えてきており、女性のニーズを肌で感じる必要があります。一方で管理職を目指す女性社員はまだ少ないため、意識を変化させるのが狙いです。女性比率を上げるのでは足りません。やるときはドンとやらないといけない」

西武所沢店では催事のスイーツの品揃えが充実し、イトーヨーカドー高砂店ではPOPに商品の説明文を入れたり店頭に花を飾るなど、「女性ならでは」の配慮がなされるようになった。

(文中敬称略)