6月30日夜、ミニシアター系映画の上映で知られるユーロスペース1階・イベント会場は予約で満員となったらしく大盛況。今夜は、映画美学校で開講される「批評家養成ギブス」なる講座のキックオフイベントなのです。講師は音楽から文学、演劇まで幅広い分野で活躍される批評家の佐々木敦さん。「『10(テン)年代』は天然の時代」という予言(!?)をされた佐々木さんが「批評」を通じて次世代に伝えようとしていることとは何なのでしょうか。そしてゲストは文芸批評家の大澤信亮さん、哲学者の千葉雅也さん、ライターの速水健朗さん。それぞれ代表的な肩書はあるものの、そこだけにはおさまらない方ばかりです。この4名が集まったらどのような化学変化を起こすのだろうという好奇心はもちろんのこと、「10(テン)年代の批評」について何か触発されるお話が聞けるのではないかという予感が止まりません!


 今回のテーマである「『以後』の『批評』のために」について佐々木さんが語ります。

 「3.11以降、『以後』という言葉が消費し尽くされているといってもいい状況であるが、批評とは常に、ある出来事・対象について常に『以後』の現象であって、僕にとって『以後』と『批評』とは同義である」。

 「震災以後」という時間からも「以後」になりつつある2012年のこのタイミングにおいて「批評」について考えることには何か特別なものを感じます。

 その後は、佐々木さんとゲストが応答しながらそれぞれの「批評」へのスタンスについて話し合われました。速水さんは、ラーメンやケータイ小説等、学問の場ではあまり語られてこなかったけれど確実に「マス」であるものを分析することによって、日本という国を浮かび上がらせている。大澤さんは、誰もが今「以前」にも「以後」にも立てておらず、漫然と今を消費しているのではないかという問題意識を提示する等、常に問題を自らにも問い直しながら、言葉だけでなく実践も伴う「批評」のあり方を模索している。千葉さんは、ドゥルーズから「ギャル男」までを横断しながら、ポストモダンを徹底的に突きつめることで、対象の分身をつくりだしてしまうような「批評」を、芸術として紡いでいこうとしている......。

 「批評」への動機は様々ながら、この三人に共通して感じるのは、従来の「批評」とは異なる地平において、自分の「批評」を模索しながら世界と向き合っているということ。その姿は気高くて、近寄りがたいところもあります。だけど、速水さんが「一番分析してみたい映画は『踊る大捜査線』だ!」と断言したり、千葉さんが「大野さんの思想的にお兄系のファッションをしているのが意外すぎる」と問うと、大野さんが「体に合うものを着ているだけです...」と答えたりするのを見ていると一気に親しみやすさが湧いてきて、私たちが普段暮らしているフィールドから逃げずに、むしろ真っ向からぶつかっていく強靭さも感じました。

 彼らがリードしていくだろう「10(テン)年代の批評」は、「天然」ならではの徹底的なマイペースさと力強さでもって、気づけば世界を変えていくようなものになるのではないでしょうか。10(テン)年代、諸々問題山積みでしんどいことも多そうだけど、「批評」も新たな局面を見せていてなかなか面白い時代になりそうです!(Rui)

 「批評家養成ギブス」は7月18日(水)に開講、受講生募集中! 申し込み〆切は7月12日(木)必着。詳細は公式サイトまで。



『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』
 著者:北原 みのり
 出版社:朝日新聞出版
 >>元の記事を見る



■ 関連記事
DF長友が日本代表のなかで「上昇思考」を共感できるのは誰?
オウム事件を追った森達也が次に挑んだのは「オカルト」
日販と高校野球ドットコム 書店で「高校野球応援フェア」開催


■配信元
WEB本の雑誌