心療内科医に聞く。睡眠中の「金縛り」はどうして起こる?




目が覚めているのに、体が何かに押さえつけられているようにまったく動かない……。そんな怖い思いをしたことはありませんか。いわゆる「金縛り」の状態ですが、なぜこんなことが起こるのでしょうか。また、対応策はあるのでしょうか。



心身医学専門医で心療内科医・野崎クリニック院長の野崎京子先生に詳しいお話を伺いました。



■睡眠の障害の一つ



金縛りの状態について、野崎先生はこう説明します。

「金縛りは、睡眠障害の症状の一つで、『睡眠麻痺(まひ)』と言われることもあります。睡眠時に、全身の脱力で体は動かないけれど、意識は目覚めている状態です。とは言っても、脳がしっかりとは目覚めていないため、誰かに全身を押さえ込まれているような感覚を覚える場合があります。



短時間ですが、息苦しさを伴うこともあります。その間、実際に呼吸が止まっていることもあるでしょう。それで、誰かに口を封じられているような夢を見ることもあるようです」



幽霊のしわざなど、霊的な経験を疑う人もいます。実際にはどうなのでしょうか。

「患者さんから、

『海外旅行中の飛行機で金縛りにあった』、

『スピリチュアルスポットと言われるところへ旅に出て、泊まったホテルで金縛りにあった……。場所柄もあって、霊では!? と怖くなってすぐに帰ったのですが』

という体験談を聞いたことがあります。



就寝中の出来事で、夢が鮮明な物語性を帯びているとなおさら、『何かにとりつかれたのでは!?』と思うこともあるかもしれませんが、それは違います。



よく話を聞くと、『海外を転々としてかなり疲れて時差もあった』とか、『旅先の宿の布団が綿の重いタイプだった』、『疲労が蓄積している』、『いつもと睡眠の環境が違った』など、体は疲労していても脳が興奮して熟睡できない状況にあったことが分かりました。



無意識のうちに、睡眠が損なわれていたわけです」

と野崎先生は、明快に話します。



■疲労蓄積に気付くきっかけとする



原因はやはり、疲労でしょうか。

「そうです。急に激しいスポーツ、ランニングや水泳などをして肉体疲労がある、スポーツ選手なので毎日激しいトレーニングがある、仕事が過酷で気が休まるときがない、精神的ストレスがたまっている、病気で入院をしている、時差ボケなど、心身ともに疲れているときに多いものです」

と野崎先生。



実際に金縛りにあったとき、対処する方法について、野崎先生は次のことを勧めます。

「意識はあるが体は寝ている、という状態から脱するようにします。『早く目覚めよう』と自ら試みてください。そのために、『目を左右に動かそうとするといい』、『声を発しようとするといい』、とも言われています。



目覚めたら、霊的な体験だと思わずに、『疲れているんだな。今日はゆっくり寝よう』と考えてください。金縛りの経験を、心身のケアをするきっかけと思うことが大切です」



金縛りが癖になることはあるのでしょうか。

「健康な場合は、そうあることではありません。もし1週間に2回以上起こるようなら、ほかの病気が隠れていることも考えられます。かかりつけの医師か、内科、心療内科を受診して相談してください」



あの不可解な感覚が、自分の疲労から来る睡眠中の症状だということが分かって安心しました。それなら対応も考えられます。疲労を感じたら、金縛りにあう前に心身を休ませることを意識したいものです。







監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える 人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス 1365円)がある。

野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12 北大阪急行桃山台駅から徒歩7分 TEL: 06-6872-1841 http://www.myclinic.ne.jp/nozaki/pc/





(海野愛子/ユンブル)