ある調査によると、同僚がランチと一緒にノンアルコール・ビールを飲んでいても「気にならない」と答えた20〜40代のビジネスパーソンは、35.9%にとどまった。やはりまだまだ少数派のようだ。年代によっても考え方に違いがあるかもしれない。

ある会社では、昼食時にノンアルコール・ビールを飲んでいる従業員に、工場長が注意をしたところ、「何がいけないんだ!?」と反発を受けているという。

度数0.00%だが従業員と工場長が対立

――製造業の人事です。ある工場の従業員から、こんな相談を受けました。

従業員たちの中には、最近社員食堂を利用せず、自宅から弁当を持ってくる者が増えているそうです。それに伴って、さまざまな飲み物を持参する者がいます。

水筒に溶かしたスポーツドリンクや、凍らせた麦茶などはいいのですが、最近、ノンアルコール・ビールを飲む従業員がいるのだそうです。

もちろん、工場内でアルコールを飲むことは厳禁です。作業ミスを引き起こしやすくなりますし、職場の秩序も守れなくなります。

しかしノンアルコール・ビールは、アルコール度数が0.00%。普通の清涼飲料水と同じです。それでも、この工場の工場長は、このような行為を許しません。

「おいおい、なんでわざわざそんなものを持ってくるんだ。アルコールが入っていないとはいえ、そういうものは仕事を終えた後に、一息つくために飲むものだ。昼休みに息抜きをしてどうする!」

人事に訴えてきた従業員は「酔っ払うわけでもなし、午後の仕事をちゃんとやれば、何を飲もうが関係ないはず」「従業員に干渉しすぎだ」といい、現在も工場長と対立状態が続いています。

こういうとき、人事としては工場長や従業員に、どうやって指導をしたらいいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
工場長がダメだといっている限り、ダメでしょう

飲酒運転ならともかく、アルコールがまったく入っていない飲み物を昼休みに飲んでも、違法行為になることはありません。ノンアルコール・ビールの販売には酒類販売業免許も不要で、未成年者への販売や飲用も法律上では特に問題ありません。しかし、現場を監督する工場長がダメだといっている限り、従業員はノンアルコール・ビールを飲むべきではないと思います。

コンビニによっては、未成年に販売していないところもあります。その理由は「ビールと紛らわしいため」や、「未成年の飲酒に対する抵抗感が薄れ、ハードルが下がるため」が考えられます。これはそのまま、職場でノンアルコール・ビールを飲むことにも当てはめられるのではないでしょうか。工場長が言うように、終業前にリラックスしすぎてもらっても困ります。昼休みは、あくまでも就業時間中の一時的な休憩です。再び仕事に戻ることを想定した休み方をしてもらう必要があるのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
新しい商品や文化によって風習は変わる

職場でアルコールを飲むのが禁止されている理由は、注意力や判断力が低下し、工場などでは事故につながるおそれがあるからです。アルコールの耐性には個人差があるものの、弱い人もいる以上、全員に対して禁止する(あるいは飲むべきではない暗黙の了解になっている)のは納得できる理由です。しかし、ノンアルコールであれば、その理由も適用できません。

ノンアルコール・ビールが、車を運転する人のノドを潤す普通の飲み物となり、ゴルフ場ではランチにビール代わりに飲む――。そんな時代がすでに来ています。20年前、髪の毛を染めて会社に来たら、それをとがめる会社も多くありましたが、今ではだいぶ許容されています。ここは従業員のモチベーションを妨げない形で、「昼休みにリフレッシュできるなら、ノンアルコール・ビールもOK」と言ってみてもいいのではないでしょうか。



(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。