スペインがイタリアを4−0で下したEURO2012の決勝戦での出来事が話題を呼んでいます。

後半のアディショナルタイムを消化している中、スペインのGKであるイケル・カシージャスが追加審判に対し「ライバルに敬意を。イタリアに敬意を。4−0なんだ」と話しかけ、試合を早く終わらせるよう求めています。

試合はそうカシージャスが追加審判に話しかけた直後に、実際に3分のアディショナルタイムを消化して終了。カシージャスは、優勝の喜びに浸る前に追加審判と握手をします。

ヨーロッパでは大差がついた後半のロスタイムを主審がほとんど取らないという場面がよく見られます。観客もまた、ある程度の力の差と得点差が付いた相手との試合の場合、試合終了前に席を立つことが普通に行われます。

そうした試合の終わらせ方に普通に接していることもあり、アディショナルタイムをきっちり取るやり方にカシージャスは違和感を感じたのかもしれません。10人で、かつ4点差を付けられたイタリアは完全に戦意を喪失しており、そんなイタリアを見たくない、もしくは晒し者にされるのはかわいそうだ、という思いがあったものと思います。いずれにしても、それはライバルに対する彼なりの敬意の表し方だったのだと思います。


海外のリーグにおいて、大差の付いた試合の後半を素早く終わらせるという場面が日本で放送されるにつけ「そういうものだ」と受け止め、そうした試合の終わらせ方があることを知る人が増えています。また日本でも「そうするべきだ」と考える人も増えています。

ただ日本人的な感性で言うと、最後まで戦い抜くことがサッカーという競技や、対戦相手、サポーターに対する敬意の表し方であると考える人も少なくはないと思います。また、競技を運営していく審判の立場に立った場合、アディショナルタイムを取るというルールから大きく逸脱する判断を日本人レフリーが取れるとも思えません。

それにしても、このカシージャスの行為は今後世界のレフェリングを変える力を持つのかもしれません。レフリーの裁量権が大きくなると、不正が入り込む余地ができるので非常に難しい問題にはなると思いますが、世界中でこの試合のアディショナルタイムの取り方について議論が沸き起こるのだろうと思います。

個人的にも、足上げスローインとともに審判部に聞いてみたいポイントの1つです。