29日に心不全のために70歳で亡くなった俳優・地井武男さん。

 地井さんと言えば、2006年に始まった番組『ちい散歩』を思い出す人が多いのではないでしょうか。同番組は、地井さんが見知らぬ地域をぶらりと歩き、見知らぬ人との会話を楽しむもの。関東ローカルにもかかわらず、中高年代に大人気の番組でした。

 そんな地井さんの座右の書は、池波正太郎著『男の作法』。いろんな場面の生き方、立ち振る舞い方、男のみがき方、品性のあり方などが書かれている本です。なかでも、地井さんにぐさっと刺さった言葉が、書籍『ちい散歩―地井さんの絵手紙』で紹介されています。

 「『人間は死ぬ......』という、この簡明な事実をできるだけ若いころから意識すること......何かにつけてそのことを、ふっと思うだけで違ってくるんだよ。......自分のまわりすべてのものが、自分をみがくための『みがき砂』だということがわかる。」

「仕事、金、時間、職場や家庭あるいは男と女のさまざまな人間関係、それから衣食住のすべてについていえることは、『男のみがき砂として役立たないものはない......』ということです。その人に、それらの一つ一つをみがき砂として生かそうという気持ちさえあればね」(「運命」『男の作法』新潮文庫)

 日々反省を促してくれる同書が、地井さんにとっての座右の書となっていたそうです。

 番組を楽しみにしていた人への地井さんの感謝の言葉は、これまで数えきれないほどありました。また、撮影に同行するカメラマンは、地井さんと同じように現地で購入したものを食べていたそうです。一緒に食べた方が視聴者に伝わるといった考えもありますが、チームを大切にする地井さんの心配りがみえる逸話です。

 散歩の時々に出会う、おじいちゃんやおばあちゃん、職人さん、子どもたちなどと接している時、地井さんは池波正太郎の言葉を思い出していたのではないでしょうか。

 世代を選ばなかった地井さん人気の理由が、少しわかったような気がします。



『ちい散歩―地井さんの絵手紙〈第3集〉』
 著者:
 出版社:新日本出版社
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