マナトレーディング(株)が、アジアを代表するテキスタイルデザイナーのユン・ニル・イー氏とのコラボレーションによるオリジナルコレクションを発表したのは、2009年のこと。その後2011年の第2弾を経て、2012年1月の「メゾン・エ・オブジェ」(フランス・パリ)には第3弾となる『Noh』コレクションを発表、日本の伝統芸能である“能楽”における舞台美術や衣装文様、謡本などにインスパイアされた独創的なデザインが高く評価された。
さらに今年5月に新発売したオーダーカーテン見本帳「VIS VOL.4」に、ユン・ニル・イー氏が手掛けたコレクション「EUN IL LEE×MANAS」を収録するなど、ユン・ニル・イー氏は、数多くの海外ブランドを展開するマナトレーディングが今もっとも注目するデザイナーの1人である。
今回はそのイー氏に話を伺った。――デザインコンセプトについて

古くから中国に伝わる陰陽五行という考え方が、私のデザインの根底にあります。太陽と月、明と暗、男と女といった相反する対称的なものを、いかにして結び付けていくか。この関係性をデザインコンセプトとして大切にしています。
その中でも、特に重視しているのがマテリアルです。そのマテリアルが自然からできているものかどうか、ということをもっとも大事にしています。


――マナトレーディングとのコラボレーションについて

マナトレーディングとのお付き合いは、今から約10年前の齋藤社長との出会いがきっかけです。
私自身は、約20年前に韓国政府が行っていた途上国支援活動に参加し、フィリピンのシルク産業振興事業に参画していました。当初はテキスタイルデザインというよりも、産業育成に注力していましたが、付加価値の高い製品をつくる必要性からデザインも手掛けるようになり、テキスタイルデザインを独学で学んでいきました。
その後10年前に、日本アセアンセンター(日本とASEAN諸国との投資と観光・交流の促進を目的に活動する国際機関)から商品開発の専門家としてフィリピンに派遣された齋藤社長が、私の工房に視察に訪れました。齋藤社長と知り合ったのはそのときです。
齋藤社長とはすぐに意気投合し、いろいろなお話をしました。特に問題意識を共有したのが、アジアに世界で通用するテキスタイルブランドが存在しないということでした。アジアにはデザインも品質も、非常に良いものがたくさんありますが、ブランドとして確立しているものはありません。いつの日か、一緒になってアジア発の世界的なブランドをつくりましょうという約束をしました。


――『Noh』コレクションについて

東洋的な精神をデザインに表現するというのが、我々の共通の考え方です。それにプラス日本の伝統文化を取り入れたい、というマナトレーディングの要望を加えて出来上がったのが『Noh』コレクションです。
「能」自体を深く理解することは大変難しいことですが、その根底に流れる精神やフィーリングを表現することは可能です。『Noh』コレクションでは、舞台や謡本、衣装といった「能」の美的な部分からアプローチしました。
また生産についてはタイ(JIM TOMPSON)、そして和紙を使った特殊プリントやシアー(分繊オーガンジー生地など)は日本で行うことで、デザインから生産・流通まで、すべてアジアで行うという、まさにイーストクリエーションにこだわりました。


――今後の目標について

10〜15年前までは、西洋は東洋を上から見ていました。しかし、現在はアジアの方がより活気があります。経済的なことだけではなく、アジアの人々の生きる姿勢や哲学的なこと、そして多様性、寛容性が今の世界中の人々に必要なことだと感じています。
日本や韓国をはじめ、アジアには美しい文化があります。そうした感性をデザインとして表現し世界に発信することで、世界の人々の生活を豊かにする、そういうものの架け橋になりたいと思っています。


――ありがとうございました。■関連記事
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