昨日の報道によれば、加藤良三コミッショナーの再任について、パリーグの複数球団が難色を示しているという。このため、6月末の任期を次回のオーナー会議がある7月12日まで延長して、再度話し合うという。
反対している根拠としては、日本代表の編成が遅れていること。そして実績不足が挙げられているという。

来年に迫っている第3回のWBCからは、NPBは日本代表を編成して試合に臨むことになっている。
各リーグ、球団の調整をして代表チームを編成するのはコミッショナー事務局だ。しかしまだ監督も決まっていない。原辰徳、秋山幸二などの名前が挙がっているが、決定には至っていない。選手に至っては選考の基準も明らかではない。

加藤良三氏は外交官出身で、野球は素人だ。しかし、事務局を主導して案を出させたり、決定を促したりすることはできるはずだ。そんな努力をしている形跡はない。

実績不足とは、よく分からない言葉だが、ようするに「彼は何をしたのだ?」という声が上がっているということだろう。



2011年3月11日の東日本大震災発生後、セリーグは予定通り3月25日にペナントレースを始めると発表、これに対しパリーグ、選手会が反対した。また、文部科学省なども難色を示した。加藤コミッショナーには仲裁の手腕が期待されたが、加藤氏はセリーグ、讀賣渡邉恒雄氏、巨人清武英利GM(このころは忠実な僕だった!)の意向を携えて、パリーグを説得しに行っただけだった。結局、選手会の赤誠あふれる声明によって、セパは4/12に同時開幕となったのだ。

東大法学部を卒業し外務省に入りエリート街道をひた走った加藤氏が、子供の使いのようなことしかできなかったのに、野球しかしてこなかったはずの新井貴浩選手会長は、その誠実なコメントで世論を動かしたのだ。

統一球の導入と、セパに分かれていた審判部の統合、ストライクゾーンの見直しなどは、コミッショナー事務局が主導した。しかしあまりにも専門性が高いため、加藤氏がこの決定に大きく関与したとは思われていない。

昨年11月には、巨人清武英利氏が渡邊恒雄氏の越権行為、コンプライアンス違反を糾弾する記者会見を開いた。「清武の乱」の勃発である。事態は清武氏のGM解任、訴訟合戦へと波及した。
今年の3月には、清武氏は渡邊恒雄氏の行状を暴露する『巨魁』を出版。

時を同じくして、巨人が新人獲得に際して、申し合わせの金額を大きく超える金を供与していたことを、朝日新聞が報じた。

さらに今月、『週刊文春』が、巨人、原辰徳監督が、不倫問題で恐喝され、1億円を支払っていたことが明らかになった。

この間、加藤良三氏は「見守っている」とのみ発言していた。一昨日、東京ドームを訪れた加藤氏は、原監督に「野球に集中して頑張ってください」と語ったという。

ここからうかがえるのは、加藤氏は巨人軍、恐らくは渡邊恒雄氏に全く頭が上がらないということだ。
震災後に渡邉氏のぱしりをしてパリーグを説得しに行ったことでもそれがわかるが、渡邉氏の気に入らないことは一切しないという、お利口さんぶりが見て取れる。
また、著しく当事者能力が劣っていることもわかる。コミッショナーとして「今、何をすべきか」が解っていない。意識レベルとして覚醒しているかどうかも怪しい気がする。

前任者の根来泰周氏も、球界再編問題などで権力者の顔色をうかがう醜態をさらけだした。最後は自らをコミッショナー代行に「降格」させて失笑を買ったが、のちに、この人は自らが「傀儡」であることに強い不満を漏らし、渡邉氏とも何度もぶつかったことを明かしている。

しかし、加藤氏は、そうしたプライドさえうかがえない。今では、コミッショナーに何かを期待する気さえ起らない。表彰状を渡すしか能のない、天下り親父としか見えない。

根来氏を史上最低のコミッショナーと呼ぶ声があったが、加藤氏はその記録を更新し、称号を受け継ぐことだけは確実だろう。

このところ、NPBでは何でも巨人の言うことを聞くという風潮はなくなって、特にパリーグからは建設的な意見が聞かれるようになった。今回の加藤良三コミッショナーへの「不信任」もその一つだ。

加藤氏は、すでに十二分に晩節を汚してはいる。せめて引き際くらいは潔くすべきではないだろうか。
就任以来4年、意見らしき意見は言わず、自分では何も決めなかったが、出処進退くらいは自分で決めてはどうだろうか。