『タッチ』の人気を支えているのは南ちゃんではなく、上杉達也!

写真拡大

高校野球を題材にした名作マンガ『タッチ』の26年後の明青学園を舞台にしたあだち充の『MIX』が、今年5月にゲッサン(月刊少年サンデー)でスタートしました。

第1話が掲載された6月号は売り切れる書店が続出したことからも、今なお『タッチ』の人気の高さがうかがえますなぜ『タッチ』は、多くのファンに愛されるのでしょうか。

野球マンガでありながら恋愛やコメディーの要素を多く取り込んだ点、浅倉南という魅力的なヒロインを登場させた点など、さまざまな点が挙げられると思いますが、心理学者の内藤誼人先生は「上杉達也のキャラクター設定が良かった」と話します。

詳しくお聞きしました!「上杉達也は練習もしないし、いつも居眠りばかりしているダメ兄貴として描かれていますが、ダメな主人公だったからこそ読者は彼に共感するのだと思います。

これを心理学では『しくじり効果』と言います」(内藤先生)内藤先生は、イギリスのハートフォードシャー大学のリチャード・ワイズマンによる面白い実験を紹介してくれました。

「サラとエマという二人の女性に、ショッピングセンターでフルーツドリンクを作るというデモンストレーションを行わせました。

ワイズマン氏はあらかじめこの二人に、それぞれ異なる演技をしてもらうようにしたのです。

まず、サラには完璧な女性を演じてもらい、ミスなくフルーツドリンクを作らせました。

一方、エマにはフルーツドリンクをこぼして服を汚してしまうといった失敗をするドジな女性を演じてもらいました。

彼女たちのデモンストレーションを見ていたお客様に、サラとエマの評価を求めたところ、なんと失敗ばかりしているエマの方が、好感度が高いことが分かったのです。

これを心理学では『しくじり効果』と言います。

人は、失敗してしまうドジな人に好感を持ってしまうという傾向があるのです」(内藤先生)内藤先生は、成績優秀、スポーツ万能、野球部のエース、まさに完璧タイプの和也が『タッチ』の主人公だったら、ここまで人気はでなかったのだろうと分析します。

たしかにアニメの主人公は、のび太クン、サザエさん、ちびまる子ちゃんなど、完璧な子ではなくドジな子やさえない子、落ちこぼれが多い気がしますよね。

完璧ではないけど、努力したり、頑張ったりする姿に読者は共感すると言えるようです。

何か欠点があった方が人は魅力的に見えるんですね!また、内藤先生によれば、この「しくじり効果」はアニメやマンガに限った話ではないとのこと。

現実世界でも、完璧すぎる人よりも失敗を経験している人の方が、人気が出ることがあるそうです。

「アメリカの歴代大統領の中で、今も人気が高いジョン・F・ケネディ。

彼はハーバード大卒、スポーツ万能のイケメン。

大統領就任時は43歳と若く、アメリカ国民は彼に魅了されました。

しかし就任直後、※ピッグス湾事件という大きな失敗をしました。

当然、支持率は下がってしまうだろうと思われましたが、事件後の世論調査では支持率が上がったのです。

この現象に興味をもった心理学者が調べてみたところ、完璧な人物が失敗を経験すると『あの人も人間なんだ』とかえって親近感がわくということが分かりました。

スーパーヒーローが自分と同じような失敗を経験していることが分かれば、親しみやすさを感じると言えるのです」(内藤先生)この「しくじり効果」、恋愛でも使えるテクニックだそうです。

初対面の人に近寄りがたいと思われているという方は、あえてちょっと抜けているドジっ子を演じてみてはいかがでしょうか? 意中の異性に親しみやすさをアピールできるかもしれません。

※ピッグス湾事件とは?1961年にアメリカの支援を受けたキューバの反政府ゲリラ「反革命傭兵軍」が、カストロ政権の転覆を試みた事件。

CIA内部の情報漏れにより失敗した。