『月と蟹』で第144回直木賞を受賞した道尾秀介氏の最新作『光』は、小学四年生の仲間たちが、わくわくするような謎や逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を経験する物語。都会から少し離れた山間の町で起こるさまざまな事件は、少年たちにとってすべて大冒険でした。

 ──小学校4年生の宏樹が手にしていたのは、父が撮ったという1枚の写真。そこには、丘の上からつづく細い水の流れが写っており、その水が真っ赤に染まっていました。宏樹はその赤い水は、ワンダの血だと言うのです。ワンダとは町の人気者だった野良犬のことで、ある事件をきっかけに宏樹たちの前から姿を消していました。

 清孝のおばあちゃん「キュウリー夫人」はワンダと仲が悪く、一度大きな喧嘩をしたことがありました。戦いに敗れたワンダはそのままいなくなってしまいましたが、キュウリー夫人も足を負傷し、救急車で運ばれたのです。その一部始終を聞いた清孝は、ワンダを「殺してやる」と言い放ったのです。

 ある日、宏樹の父が早朝にユウレイタケの撮影をしていると、角材を担いだ清孝と遭遇。清孝は驚いた様子で自宅の方に走って帰っていきました。その直前には、ガツンガツンと丘の上の方から何かをぶっ叩くような音が聞こえていたと宏樹の父。

 清孝にはワンダを殺すきっかけがあり、早朝に角材を担いで歩いているのは不自然。そして、その時に宏樹の父が撮影した写真には、真っ赤な水が流れていたのです。宏樹はワンダを殺したのは清孝ではないかと思い、本人に詰め寄りました。

 最終的に「ばあちゃんの敵をとって、俺があの犬をぶっ殺したんだよ!」と叫んだ清孝。しかし、清孝は本当にワンダを殺してしまったのでしょうか......。


 清孝は強かった。そして、「清孝が殺すはずない」と言い切ったときのキュウリー夫人も強かった。弱かったのは宏樹? それとも......。道尾秀介氏の最新作『光』は、不器用でまっすぐだったあの頃の夏を思い出したくなる物語です。



『光』
 著者:道尾秀介
 出版社:光文社
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