ディズニーのキャストたちの心温まる秘話

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 昨今の不況から、他社との差別化を図って生き残るために、さまざまな企業が施策を打っていますが、なかなか事は上手く運びません。
 そんな中で好調を維持しているのが東京ディズニーランドや東京ディズニーシーなどを運営するオリエンタルランドです。

 ディズニーランドといえば、「キャスト」と呼ばれるスタッフたちのホスピタリティの高さが特徴的です。多くの企業から注目を集め、ディズニーのホスピタリティについて分析したビジネス書も数多く出版されています。
 しかし、そうしたビジネス書を読んだとしても、彼らのホスピタリティの高さの源泉を理解しなくては応用することはできないでしょう。

 東京ディズニーランドの開園時からナイト・カストーディアル(夜間の清掃部門)のトレーナーに就任し、カストーディアル育成に努め、その後、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導した鎌田洋さんが執筆した『ディズニー サービスの神様が教えてくれたこと』(ソフトバンク クリエイティブ/刊)は、ディズニーランドのキャストたちがどのようにホスピタリティを高めているのか、4つの感動物語を通して伝えてくれる一冊です。

■成長するために大切なことをゲストの声から学ぶ
 日本でいちばん顧客満足度が高いと言われる「東京ディズニーランド」。パークを訪れたことのある人なら、誰もが“ディズニー”という言葉を見聞きしただけで、心が浮き立つような、そして温かい気持ちに包まれるような不思議な感覚になるでしょう。
 でも、それはどうしてなのか。
 確かに魅力的なアトラクションやパレード、パークの隅々に行き渡ったゲストを楽しませる仕掛けもその答えの一つですが、キャラクターやキャストのおもてなしもディズニーランドに欠かせない要素の一つです。
しかし、キャストたちは「おもてなしノウハウ集」のようなマニュアルを持ち歩いているわけではありません。もちろん、実務的なオペレーションのマニュアルはあります。

 では、最も大事なことは何なのか。
 それは、考え方や行動の基準となる“ディズニー哲学”が継承されていること、そして、キャストたち自身がディズニー哲学に基づき行動し、時にゲストから学びながら、「おもてなし」を自分なりに実践していける環境があるということです。

 本書には「オレンジ色のラブレター」「迷子の良心」「色あせたチケット」「希望のかけ橋」という4つの物語が収録されています。その中の「オレンジ色のラブレター」で、中心人物の一人でカストーディアルを指導する立場にある金田が、こんな印象的なセリフを述べています。

「サービス業に携わっている僕たちにとって、ゲストは“サービスの神様”。ゲストの声は『成長できるチャンス』をもらっているのと同じなんだ」

 ゲストに喜び、満足してもらえるように、ゲストの声から学ぶ。ディズニーランドのキャストたちにも、もちろん失敗や判断ミス、時にはゲストからクレームを受けることもあります。
 しかし、誰のために自分はいるのかと問われたとき、それは目の前のゲストのためです。ゲストに最大限ディズニーランドを楽しんでもらうことが未来につながると、キャストとして仕事をする中で学んでいきます。そう考えれば、マニュアル以上のおもてなしをするというディズニーの精神が自然と根付くことも頷けます。

 前作にあたる『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』(ソフトバンク クリエイティブ/刊)は主にカストーディアル(清掃員)がメインでしたが、本作はカストーディアルをはじめ、ガイドツアーキャスト、券売窓口のキャストなど、さまざまなキャストの模様が描かれています。
 読み進めていくうちに、感動とともにコミュニケーションの重要性を学ぶことができる本書。現在はスマートフォンやパソコンの画面を通して人とコミュニケーションをとることが多くなりました。しかし、やはり大切なのは、人と人が顔を合わせることだと気づかされます。
 前作同様、大人から子どもまで楽しめる一冊。サービス業は、ゲストとともにある。そんなシンプルなことに気づかされることでしょう。
(新刊JP編集部)