ジョニー・デップが主演作『ラム・ダイアリー』をどうしても映画化したかった理由【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは6月30日より公開されるジョニー・デップ主演作『ラム・ダイアリー』です。ティム・バートン監督とタッグを組んだ『ダーク・シャドウ』が大ヒット中のジョニー。『ラム・ダイアリー』の製作は2011年度ですから、『ダーク・シャドウ』の前の作品です。『ダーク・シャドウ』のヒットに便乗で公開? 映画のテイストも役柄も全く違う作品なので、ジョニー・ファンは飛びつきそうな予感もします。

舞台は1960年代。ジャーナリストのポール・ケンプが南米プエルトリコのサンフアンにやって来ます。NYに疲れた彼は、サンフアンの地元新聞の仕事をするように。そして企業家のサンダーソンと知り合い、サンフアン土地開発計画に好意的な記事を書くよう頼まれます。トラブルで警察のお世話になったときに保釈金を払ってもらったポールは、サンダーソンの依頼を断れない状況に。でも、彼は風光明媚なサンフアンの地を愛し始め、その土地に暮らす人々の生活をおびやかす開発に疑問を抱き始めるのです。

この映画はジョニーの友人でもあるハンター・S・トンプソンの原作を映画化したものです。なんとジョニーがハンターの家に遊びに行った時、放っておかれた原稿の中からこの原作を見つけ、出版することを薦めたそうです。やがてそれは映画化の話へと進んでいったという……。ジョニーのおかげで陽の目を見た物語なのですね。

しかし、原作者のトンプソンは2005年に拳銃自殺を図り、この世にはいません。破天荒なライターだった彼の仕事はゴンゾー・ジャーナリムズと呼ばれました。これは取材対象を第三者的な目線で取材執筆するのではなく、取材対象の中に飛び込み、共に体験をする形でレポートする独自のスタイルのこと。本作の主人公ポールもおそらく彼自身で、彼が取材する土地開発も実際にあったことなのかもしれません。ジョニーはトンプソンの葬儀を仕切ったほどの深い友人関係にあったので、何が何でもこの映画を実現させようとしたのでしょう。

でもこの映画を見る前は、ちょっと不安でした。ジョニーは同じトンプソン原作の映画化『ラスベガスをやっつけろ』にも出演しており、ハゲ頭でドラッグ中毒という「これがジョニー?」とファンが目を丸くするようなキャラを演じていたからです。「もしかして今回もとんでもないかも?」と思っていましたが、本作の主人公は迷い、寄り道をしながらも、まっとうなジャーナリスト精神を貫こうとする男でした。もっとも『ラスベガスをやっつけろ』の監督はテリー・ギリアムで、本作は『キリング・フィールド』の脚本でアカデミー賞候補にもなったブルース・ロビンソン。原作者の破天荒な個性より、監督の個性が映画に色濃く反映されていたかもしれません。

ちなみにこの映画で主人公のポールが恋する女性を演じたアンバー・ハードは現在のジョニーの恋人と噂されている美人女優です。ヴァネッサ・パラディと破局を発表したジョニーの新しい彼女と思って見ると、イチャイチャシーンが妙にリアルだったりして……。というスキャンダル目線でも楽しめる『ラム・ダイアリー』。『ダーク・シャドウ』の白塗りとは違うジョニーのハンサムなマスクも拝めますよ。

(映画ライター=斎藤 香)

『ラム・ダイアリー』
6月30日公開
監督ブルース・ロビンソン
原作ハンター・S・トンプソン
脚本ブルース・ロビンソン
出演:ジョニー・デップ、アーロン・エッカート、マイケル・リスポリ、アンバー・ハード、リチャード・ジェンキンスほか
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