「まんがタイムきらら☆マギカ」芳文社
一冊まるごと「まどか☆マギカ」の、雑誌登場! マミさんが31歳だったり、幼稚園児だったりとなんでもありのギャグオンリー雑誌。中身のほどはいかに?

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「まんがタイムきらら」という萌え系マンガ雑誌があります。
この「きらら」シリーズは数が多くてですねえ。
「まんがタイムきらら」「まんがタイムきららCarat」「まんがタイムきららフォワード」「まんがタイムきららMAX」「まんがタイムきららミラク」、と。
多いよ!
最近は加えてアンソロジー(要は雑誌じゃなくて書籍扱い)の「まんがタイムきららカリノ」も追加されました。
多いよ!!
正直、自分も買って読むんですが、どれがどの雑誌に載っているか間違えることがあります。
しかたないんや。

そんな中、もう一つ増えました。
「まんがタイムきらら☆マギカ」です。
もうお分かりですね。「魔法少女まどか☆マギカ」のみで構成された、まんがタイムきららシリーズの雑誌です。

アンソロジー形式なのは以前出ているんですよ。
4コマアンソロジーもこれから発売されます。これなら「きらら」らしいですし、まあ、わかる。
でも「雑誌」で出るというのはあまりにも珍しい。
しかも、「魔法少女まどか☆マギカ」って、キャラの数が少ないんです。主人公の鹿目まどか、暁美ほむら、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか。
ほかにもちょろっと出てくるキャラ(恭介や仁美など)もいますが、ほぼこの5人+キュゥべえや魔女達の話です。
それで雑誌? 雑誌ってことはもう最初から長く続ける予定なの!?
そもそも「まどか☆マギカ」って、惨劇を交えながらきっちり物語が終わっているのに、公式で一体どうするの?
ぶっちゃけ、中身はどうなの?

結論から言うと、なんでもありで成立させています。割りと力技で。
一番目を引くのは、「巴マミの平凡な日常」という作品でしょう。
このマンガはネットで非常に話題になり続けていた作品です。なんせ中学校だった魔法少女達、全員アラサーですからね。
すげえ、「少女」全否定。
主人公になっている巴マミは31歳。
独身。彼氏なし。
やったね! そういうの大好き。
部屋でジャージ着て、ビール飲んでるマミさん。
お腹が冷えるので腹巻をして、そのポケットにスペアキーとソウルジェム(簡単に言うと魂のかたまり)を入れているマミさん。
31歳で魔法少女ミニスカのマミさん!
あら、かわいいじゃないの。
ちなみにマミさん以外の子達も普通に大人になっていて、結婚済み子持ち+婚約済みです。

もうこれが許されたらなんでもありですよね。
そもそも本編で「魔法少女」は「少女」だったはずなのに、そんなのどうでもよくなってます。
キュゥべえのエントロピー搾取システムとかもそっちのけ。みんなあのまま平和に魔法少女やってました(過去形)そして大人になりました、マミさんだけ独身です。
そりゃ面白いわ。

だいたいの作品のアンソロジーは、作品で描かれていなかった隙間を二次創作的に埋めていく物が多いです。
高校生活マンガだったら、本編に出ていない生活のワンシーンはいっぱいありますものね。
しかし「魔法少女まどか☆マギカ」という作品は特殊で、そういう妄想の余裕を差し挟む隙が非常に小さいです。
またその隙間に挟まろうとするなら、登場人物達の精神状態が極限なので、どうやっても悲劇になってしまいます。

ところが「魔法少女まどか☆マギカ」には一つ画期的なシステムがあります。
それは、暁美ほむらが一定時間だけ戻すことができるということ。
つまり無数のパラレルワールドがあってもOK、というシステムなのです。
ならば、全員が無残に命を散らして死んでいく最悪の状況もあれば、全員がのんびりハッピーに暮らす状況だってあるんじゃないか。
ここがうまーいこと膨らんで、マンガになっているのです。
特に巻頭の「ほむらリベンジ!」はその設定をうまく使っており、本編の設定を利用しながら全く別の時間軸で、本編と別の方法で成功させようとするマンガに仕上がっています。
シリアスとギャグの中間のような作品で、作品の別解釈として見ると非常に興味深いものになっています。

そうかと思えば「魔法少女部まどか☆マギカ」では、学校でみんな仲良く「魔法少女部」を結成するという、およそありえない話が展開しています。
何がめちゃくちゃかって、本編では敵として戦っていた魔女や魔女の手下たちが普通に学校に通っているんだもん。
なんだそれ! 面白いじゃん。「集まれ!まどか☆マギカ学園!」では、魔法少女の願い事として魔女と暮らす生活も描かれています。これぶっちゃけ、つじつまあわせとかどうでもよくなってますよね。
「みたきはら幼稚園まほう組」ではマミさんがほぼさん、他の子が幼稚園児に……ああもう自由だなあ。

自由に描いた感が強いこの雑誌ですが、一番楽しめるのはそれぞれの作家のキャラの見方が違うという点。
たとえばほむらですが、無口でひたすらまどかが大好きなほむらもいれば、マミさんとルームシェアしてちょっと気になる関係なほむらもいます。またアグレッシブなほむらもいれば、短気なほむらもいます。
キャラクターを知っていれば「あ、こんな楽しみ方もあるのか」というのが一同に介しているので、そこは最大の魅力。
いかんせん最初にも書きましたが、キャラ少ないですからね。絶対描くキャラかぶるんです。

ギャグ寄りの作品が多い雑誌なので、シリアスな「まどか☆マギカ」本編が好きな人で、今まで同人誌などを見たことがない人はちょっとびっくりするかもしれません。
いや、まあ同人誌とか読んでいてもびっくりするような設定の作品多いですが。
ただ、ここまで全作品ギャグ寄りだと安心もできます。
「成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論」、の中でこんな文章があります。
「『まどか☆マギカ』の二次創作には、主人公たちが一緒にお茶を飲んだりじゃれあったりするだけの、どうということもない内容のものが多い。しかしそれらが、じっさいには穏やかな日常を決して許されなかった彼女らへの鎮魂歌として描かれたものでもある、ということを見逃すべきではない。たがいに衝突しては運命に押し流されていく魔法少女たちの姿に、ファンは心臓をわしづかみにされたのである」
もちろん同人誌にはシリアスものもすさまじい数ありますが、ギャグものが多いのも事実です。
続きあり、が前提の「まんがタイムきらら」の名を背負って雑誌になった「まどか☆マギカ」の公式二次創作が、ギャグオンリーというのは、この文章と比較してみるとなんとも興味深いですね。

鎮魂歌かあ。
10月6日には「まどか☆マギカ」の映画版総集編の前編「始まりの物語」、10月13日には後編「永遠の物語」が公開され、その上完全新作が一本予定されていますが、少なくとも総集編はずっしり重いものなのは間違いありません。
こんごこの雑誌が鎮魂歌としてギャグを歌い続けるのか、それともコミカライズ版や魔法少女かずみ☆マギカのような重たいネタを載せてくるのか、どっちに行くんでしょうね。
アンソロではなく雑誌にした価値としては、監督新房昭之と鹿目まどか役悠木碧のインタビューや、映画の告知記事が載っているということ、でしょうか。
にしても「まどか☆マギカ」ファンしか買わない雑誌が成立するって、ちょっとすごいよ。
第二号は8月9日発売です。
(たまごまご)

「まんがタイムきらら☆マギカ」