金の国際需給統計に変化が表れてきている。過去数十年にわたって見かけなかった新興国の中央銀行による“新顔”の台頭と、購入量の急増が変化の要因という。今後は…。亀井幸一郎が最新の金マーケットを斬る!


金貴金属の需給調査で知られる会社、トムソン・ロイター・GFMSから金の国際需給統計が発表された。

需給の全体像を踏まえて表すならば、「アジアを中心にした新興国の台頭が続いている」ということだ。ただし、急伸してきたインドや中国に関しては、最近のユーロ圏の債務金融危機を遠因に、需要の落ち込みが見られる。

一方で、2011年の新興国中央銀行による金の購入は455トンにも上り、前年の77トンから急増した。南欧を中心に投資対象としての国債の信頼が揺らぐ中で、外貨準備の一部を金に振り向ける国が増加しているからだ。

昨年の特徴としては "新顔" が多く見られ、また、市場からの直接調達が増えていることが挙げられる。というのも、従来は公的購入といっても、国内での生産分や還流分を買い取る方法が主だった(積極購入で知られるロシアがその典型例だ)。

これは、間接的には世界需給に影響を与えるが、そのインパクトは市場購入に勝るものはないということだ。つまり、公的購入の金価格への影響力は、需給面でも強まっているといえる。この "中央銀行の買い" は、金市場では投資家心理へのポジティブな現象として捉えられてきた。もちろん、中銀の買いが上昇を保証するものではないが、各中銀が再び金を認知し始めたという動きは、投資家の強気をサポートする要素となっている。そこに09年までの21年間にわたり "売り手" として金市場に登場していた部門が、"買い手" に変貌した需給上の転換に加え、「市場からの買い上げ」も行なった結果、数量も急増したというわけだ。

前述の通り、金の売買では過去見かけなかった "新顔" が登場している。たとえば、メキシコ(99トン)、トルコ(79トン)、韓国(40トン)など。そのほか、10年にIMF(国際通貨基金)が売却した分の一部(16トン)を引き取って登場したタイが、11年には53トンに。なかでも韓国は、今年2月に中央銀行関係者が、外貨準備を積極的に運用する旨の発言をして注目された。金についての発言はなかったが、類推すると、中銀としてポートフォリオの組み替えを積極化する過程で、金購入が要素として浮上していると思われる。こうした動きは、現在でも続いているとみられ、今年も新興国中銀の購入は、金価格の大きなサポート要因になるだろう。




亀井幸一郎
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。


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この記事は「WEBネットマネー2012年7月号」に掲載されたものです。