ネット文化が発達し1億人総発信となった現代、様々な罵倒する言葉を文字として見かけるようになりました。いわゆる「炎上」といった状態になっている場合は、目を覆いたくなるものもしばしば。言葉は耳で聞くよりも、目で見た時の方がインパクトがあります。

 昼間は会社員で、夜は小説家として活躍する超・庶民系芥川賞作家の津村記久子さん。初の脱力系エッセイ集『やりたいことは二度寝だけ』のなかで、もっとも厳しい他者への罵倒は何か、について触れられています。

 津村さんが考えるもっとも手厳しい罵倒は、「友達がいなさそう」。この言葉には、相手の人格や根本的な部分を攻撃しているので、バカやブスにもない威力があるというのです。確かに、バカやブスというものは、表面的なもので、また、一時的なもの。今後変わっていく可能性はあります。しかし、「友達がいなさそう」のフォローする貶しの範囲は広いと津村さんは言います。

 「横軸を貫く感触のバカ&ブスに対して、『友達がいなさそう』には、恒久的な相手の人生を否定する意味合いすらある。逆にいうと、バカでもブスでも才能がなくても貧乏でも人生経験が薄っぺらでも、良い友達がいたらなんとかなりそうだ。さらに逆に、賢く容姿が良く才能もあり金持ちで重厚な人生経験を持っていても、友達がいない、となると、前者のイージーゴーイング感とは真逆の、なにがあったんだろう? どんな人なんだろう、という深刻さがまとわりつく」(津村さん)

 津村さんが言うように、「友達がいなさそう」の言葉が与えるダメージは大きそうです。なるべくなら耳にしたくありませんし、目にしたくもありません。そんな殺傷能力の高い言葉ですが、津村さんは、もう少し踏み込んでこの言葉を分析しています。

 この言葉を使って攻撃しようとする人の心の中には、「友達がいないことの孤独」への恐れがあると言うのです。その恐れがあるからこそ、こういった言葉が出てくるのです。よって、罵る人は罵る対象と、「友達がいないことの孤独」を中心にして、つながっている状態だと言えるのです。

 確かに、常日頃から「友達」を意識していなければ、「友達がいなさそう」といった言葉は出てこないのかもしれません。相手にはダメージを与える言葉ですが、それと同時に、あまり使いたくない言葉でもあります。



『やりたいことは二度寝だけ』
 著者:津村 記久子
 出版社:講談社
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