GPSとアインシュタインの意外な関係




今や、普段の生活の中に、無くてはならない存在となった「GPS」。カーナビや携帯電話など、身近なところでいろいろ活用されていますが、今回はそんなGPSとアインシュタインとの意外な関係性について、ご紹介したいと思います。





■GPSとは



「GPS」とは、Global Positioning Systemの略で、衛星からの電波をもとに、地球上での位置を調べるためのシステムです。



最近では、自分の位置を調べる目的などで利用されることが多くなりましたが、もともとはアメリカ合衆国が軍事用システムの1つとして開発したのがその始まりでした。



■GPSで位置を取得する仕組み



ところで、そもそもGPSはどのようにして位置情報を取得しているのでしょうか。



カーナビなどに搭載されているGPSアンテナ(受信機)は、地球の周回軌道上に打ち上げられた全30機のGPS衛星から、いくつかの電波を受信して、その衛星までの距離を測ります。



仮に、GPS衛星と受信機がどちらも正確な時計を持っていれば、衛星が電波を出した時間と、受信機がそれを受信するまでにかかった時間の差から、その距離を測ることができます。



このとき、理論上では3つの衛星から受信機までの距離が分かれば、3次元空間上での位置を特定することができます。

しかし、実際には受信機には、そこまで正確な時計を持たせていないことが多いため、誤差が生じてしまいます。

(例えば、時計が1秒狂っただけで、30万kmもの誤差が発生しまい、まったく使い物になりません。)



こうした理由から、4つ目の衛星からのデータを受信することによって、3次元空間上の位置と時刻の計4つを未知数とした方程式から、その位置を割り出すことで、時計の狂いをカバーし、その精度を維持しています。



■アインシュタインの相対性理論とは



有名なアインシュタインの相対性理論には、1905年に発表された「特殊相対性理論」と1916年に発表された「一般相対性理論」の2つの理論があります。



相対性理論そのものの中身は難解なので、ここでの説明は省略しますが、この2つの理論をもとにして、特殊相対性理論からは「高速で運動する物体は時間の流れが遅くなっていく」ということが言え、一般相対性理論からは「重力の影響が小さくなると時間の流れが速くなっていく」ということが言えます。



■GPSと相対性理論の深い関係



勘のいい方は、ここまで読めばGPSと相対性理論の関係に気づいたかもしれませんね。



GPS衛星には、非常に高精度な原子時計が搭載されているのですが、(1)非常に速い速度(時速 約14,000km)で、(2)重力の小さい宇宙空間(高度 約2万km)を移動しているため、上の2つの理論の影響を受け、どうしても内蔵された時計に狂いが生じてきます。

そのため、GPS衛星の内蔵時計では、相対性理論を考慮して、自動的に時刻を補正する機能を保持しています。



ちなみに、もし相対性理論を考慮しないとすると、GPS衛星に搭載された内蔵時計は、1日あたり30マイクロ秒(0.00003秒)ほど早く進んでしまう結果となり、それだけで求められる位置は10km近くも誤差が生じてしまいます。



アインシュタインの相対性理論が、こんなところで応用されているとは驚きですね。



■GPS衛星の時刻が狂う別の理由



4年に一度、うるう年というのがあるのをご存じだと思います。

さらに、これとは別に数年に一度、うるう秒というものを使って、秒単位での時刻の補正が行われています。



しかし、GPS衛星ではうるう秒まで対応することができないため、この時間のずれについては、カーナビなどの受信機側で補正を行っています。



■まとめ



このように、日ごろは気軽に利用しているGPSですが、正確な位置を割り出すためには、これほど精密な時計が必要となります。



しかも、その正しい時間を刻むための方法として、実はアインシュタインの相対性理論が使われているとは奥が深いですね。



(文/寺澤光芳)



■著者プロフィール



寺澤光芳。小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。